【リプレイ風小説 第7話 再戦(リターンマッチ)】

 

ACT.4 混乱とメテオ


「メルティ〜☆ パラダ〜イスッ!!!」
 眩い光に包まれ空中に浮かんでくるくると回るリトルウィッチのまぼろしが、視界いっぱいに広がる。チカチカと目が眩む光がオーガと鎧幽霊からなる屈強な魔物の群れを包む。すると、魔物どもは混乱し、敵を見失い、同士討ちする物さえいた。
「きゃーッ! なになに、この子。メルちゃん? ちっちゃ〜い! カワイイ〜ッ!」
 ビーストテイマーのフラウが、小さな女の子の姿に戻ったメルティを見て奇声を上げる。
「カワイイだーよ」
 それにネクロマンサーのゴーンが加わる。頭からすっぽりとフードを被っているのでその表情はよく見えないが、どうやら喜んでいるらしかった。
「嬢ちゃんも、ゴンちゃんも、遊んでないで働いてよ! こいつらが混乱している今がチャンスなんだからさ!」
「うん! わかった!」
「はい、だーよ!」
 スニークの忠告に、二人が元気に返事する。
「待って、その前に。RRさん、アインさん、メテオよ!」
 小さな女の子の姿のままメルティが叫ぶと、それに応えて二人のウィザードが杖を振り上げた。
 大量の『心の力』と引き換えに、空中に燃え盛る隕石を召喚し、それを魔物の群れ目掛けて落とす。辺りは轟音と共に眩い光に包まれ、白い闇に変わる。凄まじい熱と爆風が魔物の群れを殲滅する。
 二人のウィザード、RRとアインが続けざまに唱えた十発の究極魔法『メテオシャワー』が、魔物の群れに降り注いだ。
「うっひょースゴイね、メテオのアニキも支援ちゃんも。オイラたちの出る幕ないんじゃない?」
「まだよ」
 そう言ってくるりと一回転すると、メルティは小さな女の子から元の抜群のプロポーションのリトルウィッチへと変わっていた。
「まだまだいるはずなんだから」
 その言葉どおり、メテオの白い闇が引くと、倒れた魔物を踏みつけにして、別の魔物がぞろぞろと集まって来た。
「テンツク! ドンツク! いっけーッ!」
「ウキー!」
「ウキャー!」
 フラウが攻撃命令を下し、物悲しいビーストテイマーの笛を奏でると、忠実なるしもべである二体の魔獣ファミリアは、一番近くにいる魔物に向かって突進して行った。
「オラも行くだーよ」
 ファミリアにネクロマンサーのゴーンが続き、妖しげな呪術を唱えた。すると、元々緩慢だった魔物の動きが、呪術により更に緩慢さを増した。
「もう一度! メルティ〜☆ パラダ〜イスッ!!!」
 また、チカチカとした光に包まれたリトルウィッチの幻が空間に広がり、魔物の群れを混乱させる。
「RRさんに、アインさん。今のうちに『心の力』を回復よ!」
「わかってます」
 再び小さくなったメルティに、杖を8の字に回しながらアインが応えた。本来ならば『ポーション』を使って『心の力』を回復し、次のメテオ攻撃に備えたいところだが、この納骨堂の『秘密ダンジョン』は先が長い。序盤で物資を浪費するわけにはいかない。集中力を高める魔法を使って、『心の力』を回復してはいるが、それには時間がかかるのだ。
「危ない! ゴーンさん!」
 シップが叫んだときには遅かった。
 ファミリアが相手をしているのとは別の魔物に、ゴーンが呪術をかけようとしたとき、魔物が振りかぶった巨大な棍棒がゴーンの頭を砕いた。
 ――ぐしゃりと頭蓋がつぶれる音がした。
 シップが入念に聖なる守りの魔法をかけていたというのに、ネクロマンサーはあっけなく絶命した。
「あの魔物、混乱していない――」
 強大な魔物の力に、全員に戦慄が走った。しかし、ゴーンを一撃で倒したオーガは、それにだけでは飽き足らず、巨体を揺らしてのっしのっしと近づいて来た。
「嬢ちゃん、そいつを引き付けて!」
「ダメだよ、コソドロさん! こっちも手が離せないよ!」
 見ると、二体の魔獣が相手にしている鎧の魔物も、正気を保っているようだった。
「コイツッ!」
 スニークが赤銅色に輝く手斧を迫り来る屈強な魔物に向けて投げる。くるくると回転しながら魔物を切り裂くが、オーガは怯むことなく前進を続けた。
「チキショー、オイラの『ルインドライバー』でも一撃じゃ無理か」
 ブーメランのように手元に戻ってきた手斧『ルインドライバー』を受け取って、スニークは毒づいた。
「不思議ちゃん! もっかいくるくるってやつやってよ!」
「無理よ、変身しないと」
 まだ小さな女の子のままのメルティが叫ぶ。
 そのとき、ひょうと風を切る音を立て一本の矢が魔物に突き刺さった。瞬間、耳をつんざく雷鳴が轟く。
「これが、サンダープレートの威力よ」
 突き刺さった矢から電流が流れ、轟く雷鳴が魔物を混乱させる。美貌の弓使いパラレルは自分の放った矢の威力に不敵に、そして素敵に笑った。
「ナイスだよ! アネさん!」
 スニークの声に、パラレルが視線で応える。
「シップさん! 今のうちにゴーンさんを『生』き返らせて!」
「任せてください!」
 メルティの声と同時に、シップがビショップの究極魔法『リザレクション』を唱えた。聖なる祈りが命の灯火を再び点け、絶命したゴーンが息を吹き返す。
「支援君、アスヒだ!」
「でも、RRさん。まだ『心の力』が」
「今は、ネクロを救うのが先だ!」
「は、はい!」
 二人のウィザードは急いで『アースヒール』の呪文を唱えた。地脈から汲み上げた生命のエネルギーを瀕死のネクロマンサーに注ぐ。
「助かっただーよ」
 生き返ったゴーンが、最前線から一旦引く。
「RRさん、メテオいける!?」
「もう少しだ」
 再びリトルウィッチの姿に戻ったメルティに、RRは応えた。
「アニキ、やばいよ! そろそろ混乱が解ける!」
「RR! 早く!」
 混乱が解けた魔物にパラレルが次々に矢を射掛け、再び混乱させる。しかし、魔物の群れは後から後から湧いて出るように迫って来ていた。
「支援君、行けるか?」
「はい!」
 その声とともに二人のウィザードは杖を振り上げ、魔物の群れをもう一度メテオの焦熱地獄へと突き落とした。

 

 

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