【リプレイ風小説 第6話 偽者達の円舞曲】

 

ACT.13 偽者達の舞踏会

「ベアリーク! 貴様!」
 赤い髪をなびかせ、ロンドがベアリークに向かってしゃにむに槍を繰り出す。
 それを赤い髪の魔人が盾となって振り払う。
「ベアリーク様には、指一本触れさせん!」
「そこをどけ!」
 ロンドが叫ぶ。が、赤い髪の魔人はそれを無視して、目の前に立ちはだかった。
「ハンナ」
 ロンドの手が止まる。
 そこへ黄色い髪の魔人が襲う。
 その攻撃をかいくぐり、腹に槍を叩き込む。しかし、鎧のように硬い表皮が槍を弾く。
「ベアリークーッ!」
 憎しみを込めて、魔人の名を叫ぶ。
「ロンドさん!」
 ナイトの盾が、黄色い髪の魔人の異形の武器をいなし、流れるような動きで斬りつける。
 次の瞬間、メテオの爆音が轟いて閃光が視界を奪った。
「ベアリークーッ!」
 もう一度、ロンドが叫ぶ。
 メテオの閃光が消え視界が戻ると、ベアリークの周りを、白いウサギが跳ね回っているのが見えた。
「逃がさないんだから!」
「小娘が!小賢しいまねを!」
 忌々しげにベアリークが毒づく。
 大鎌を持ったニ体の魔人が、一斉にメルティに襲い掛かる。
「コルド、チルド、攻撃」
 二頭の神獣が、大鎌を持った魔人に襲い掛かる。ドランクが一体の魔人の大鎌を素手で受け止め、腹を蹴り上げる。しかし、残る一体の魔人はユニコーンの角をかいくぐり、無防備なメルティを襲った。
 ブンと振り下ろした大鎌が、メルティの背中を切り裂き鮮血が飛び散る。それでも、リトルウィッチの少女は、白ウサギを指揮するバトンの手を止めなかった。
「メルティさん!」
 アインが唱えたメテオが炸裂し、魔人が怯んだ隙に、アースヒールでメルティの傷を癒す。
「逃がさないんだから、絶対に!」
 涙目で叫ぶ少女をひと睨みすると、ベアリークは呪文を唱えた。
 禍々しい、負のエネルギーが魔人達を包み、その動きが倍の速さに変わる。
「動きを封じてるはずなのに……。どうして魔法を」
「残念だな小娘」
 魔人が薄気味悪く笑うのに、一瞬躊躇する。
「ひるむな! 続けろ!」
 RRの叫び声にうんと頷き、気を取り直す。
 スピードを増した魔人達の攻撃は、より苛烈を極めた。しかし、ダメージを追う度に、シップの呪文が傷を癒した。冒険者達はひとり、またひとりと魔人を葬り、残るはベアリークと、赤い髪の魔人のみとなった。
「そこをどけ!」
 ベアリークの盾となる赤い髪の魔人に向かって、ロンドは叫んだ。
「そこをどいてくれ、頼む」
 懇願するが、魔人がそれを聞き入れようはずもない。
「我が命は、ベアリーク様と供に」
 赤い髪の魔人の異形の武器がロンドを襲う。
 一瞬、回避の動作が遅れる。
 異形の武器が肉を裂き、鮮血に染まる。しかし、それはロンドの血ではなく、咄嗟に割り込んで盾となった、ナイトのものだった。
「ナイト!」
「ロンドさんは僕が守ります」
「ナイト……」
「僕って、ロンドさんに頼りにされちゃってますから」
「バカッ」
 笑うナイトに、泣きそうな顔で答える。
 シップの癒しの呪文が、ナイトの傷をじわじわと癒す。
「コイツは、僕が倒します!」
「ナイト!」
 うおおと雄叫びを残し、ナイトが魔人に襲い掛かる。残像を残すほどの素早い攻撃を受け、魔人の身体がその髪と同じ色の赤い血に染まる。
 とどめとばかりにソードを大きく振りかぶったときに、防御がお留守になった。その隙を見逃さず、魔人が異形の武器を繰り出す。
 鍵爪がナイトの腹をえぐる寸前に、ロンドの槍が異形の武器を弾き飛ばした。
 赤い髪の魔人の体制が崩れ、大きな隙ができる。
 今、がら空きの胸に槍を突き立てれば、この魔人を葬ることができる。
 しかし。
 ロンドは動かなかった。動けなかった。
 赤い髪の魔人の白い顔が、妹の顔に重なる。
「(姉さん、殺して!)」
 頭の中に声が響く。
 涙がひと筋頬を伝う。
 口を真一文字に結び、ひと思いに繰り出した槍の一撃が赤い髪の魔人の心臓を貫いた。
 血反吐を吐き、赤い髪の魔人が助けを求めるように、震える手をロンドの方に差し出す。その手を取ろうとしたとき、魔人の身体は弾けて霧散した。
 暫く言葉が出なかった。
 とめどなく流れる涙が両の頬を濡らした。
「(姉さん)」
 頭の中に声が響く。
「(姉さん、ベアリークを)」
 コクリとひとつ頷く。
 それから、顔を上げると、キッと睨みつける。
「ベアリーク、貴様を殺す!」
 雄叫びを上げて、ロンドは最後の魔人に襲い掛かった。

 

 

<<前へ                        <戻る>                     次へ>>