【リプレイ風小説 第6話 偽者達の円舞曲】

 

ACT.10 秘密組織

  眩い稲光に目がくらむ。
「こいつ、雷の術を使うのか!?」
 魔法防御の術でも防ぎきれずに負ったダメージを、シップの『パーティーヒーリング』の魔法がじわじわと癒す。
「私に任せて!」
 白いウサギ達が、ぴょんぴょんと跳び回って、魔人の動きを封じる。
 ドランクの三段蹴りが決まると、体を入れ替えてナイトがソードで斬りつけ、そして、ロンドの槍が魔人を貫いた。
 メテオの爆発が地面を揺らし、その閃光が消えたとき、勝負は既に決まっていた。
 魔人は、二頭のユニコーンの角に胸を突かれ、断末魔の声を上げると、その肉体は弾けて霧散した。
 直後、また、キリキリと大掛かりな機械仕掛けが動く音が響き、壁面にぽっかりと出口が開いた。
「今の魔人で、この第四の区域は終わりですか」
 誰に聞くともなしに口をついて出たナイトのつぶやきに、ロンドがああと答える。
「あとは、最後の区域を残すだけだ」
 ロンドの言葉を、ゴクリとツバを飲み込んで聞く。
「アインと、シップはもう一度、支援魔法をかけ直してくれ」
「その前に」
 支援WIZとビショップにとばしたロンドの指示を、RRが遮った。
「傭兵、その前に聞きたいことがある」
 『狂乱の魔術師』と呼ばれる男は、静かに口を開いた。
「この『秘密ダンジョン』の目的はなんだ?」
「前にも言ったろ。ベアリークを倒すことさ」
「では、ベアリークとは誰だ? 何者だ?」
 ロンドが即答したのに、畳み込むように更に聞く。
「傭兵、お前はベアリークが危険人物だと言った。組織が長年追い求め、ようやく追い詰めたと。だが、それ以上のことを言っていない」
 皆しんとして、RRの言葉を聞く。
「『秘密組織レッドアイ』に関係あるんじゃないのか?」
 一瞬ピクリとロンドの眉が上がる。
「『秘密組織レッドアイ』って、『赤い石』を探すために作られたという伝説の組織でしょ?」
 アインの問いに首肯する。
「確かにこのスウェブタワーは、古来からレッドアイのアジトだったとか、いろいろと噂はありますが、だからと言ってレッドアイに結びつけるのは、安易じゃないですか?」
「いや、そうとばかりは言えない」
 今度は、アインの言い分を否定する。
「『秘密組織レッドアイ』にまつわる伝説には、眉唾物も混じっているのは間違いない。しかし、このスウェブタワーには、レッドアイの確かな痕跡が残っている。それも、ひとつやふたつじゃない」
「そうなんですか?」
 アインが聞き返したのに、また、ああと答える。
「それに『真紅の魔法師』の件だ。自らの手で『赤い石』を創ろうとし、『真紅の魔法石』を作り上げた『真紅の魔法師』。それを援助したのがベアリークだと、傭兵は言った。考えても見ろ、あの『真紅の魔法石』を造った研究施設や、このスウェブタワーや『河口ダンジョン’ラ’』の『秘密ダンジョン』の設備を個人の力で作れると思うか?」
 RRの説明に、あっと声を上げる。
「ベアリーク個人の力じゃなく、『秘密組織レッドアイ』の力だと?」
「ああ」
 まるでやっと正解にたどり着いた子供を褒めるように、RRは頷いた。
「全く、アンタにはかなわないよ。『狂乱の魔術師』」
 そう言ってひとつ溜息をつく。
「アンタの言うとおり、ベアリークはレッドアイの首領さ。但し、偽者のね」
「偽者? ですか?」
 ロンドの言葉をアインが鸚鵡返しに繰り返したのに、うんと頷く。
「ベアリークは自らを旧レッドアイの生き残りだと名乗り、レッドアイを再興するという名目で造り上げたのがヤツの新生レッドアイさ」
 皆黙って耳を傾けた。
「新生レッドアイの目的は、ただひとつ。『赤い石』を創ること」
「なんと愚かな!」
 シップが神を恐れぬ所業に、天に向かって許しを請う。
「だが、新生レッドアイには、レッドアイを名乗る資格がない。ベアリークがレッドアイ首領の正当な継承者じゃない以上、新生レッドアイはただの偽者に過ぎない」
 まるで、瞬きの音が聞こえるぐらいに、しんと静まり返る。
「組織は、ベアリークがレッドアイの名を語り、『赤い石』を創ろうとするのを許さない。だから、アタシはベアリークを討つ。ヤツさえ討てば偽レッドアイを壊滅させることができる。他の者はベアリークに踊らされてるだけだから。それがこの『秘密ダンジョン』の目的」
「あの」
 恐る恐るといった風に、アインが口を挟む。
「ひとつ聞いていいですか?」
「なんだ?」
 戸惑いながらも、思い切って口を開く。
「偽レッドアイの首領を勤めるベアリーク討つべしと、ロンドさんに命じた組織って、アリアンの傭兵ギルドですか? それとも」
 心を落ち着けるようにツバを飲み込み、ひとつ間を置いてから続ける。
「ひょっとして、本物のレッドアイ」
「アイン」
 静かに支援WIZの名を呼ぶ。
「今の質問は聞かなかったことにするよ」
「でも……」
 アインの言葉を遮って続ける。
「じゃないと、アンタを殺さなくちゃならなくなる」
 ロンドの殺気に、背中に冷たい汗が流れる。
 アインは次に言う言葉が見つからず沈黙した。
「もういいかい?」
「いや、もうひとつある」
 話を切り上げようとしたのを、RRが止める。
「もうひとつ隠していることがあるだろう?」
「なんのことだ」
 ロンドが聞き返すと、RRが躊躇することなく答えた。
「傭兵、お前が首からさげている、その『真紅の魔法石』のことだ」

 

 

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