【リプレイ風小説 第6話 偽者達の円舞曲】

 

ACT.6 強運

「四号機起動! 四号機起動!」
 ロンドが大きな水晶玉に触れると、その色が赤から緑に変わり、無機質な声が流れた。しかし、今度はこれまでの3つの魔力発動機を起動したときとは違い続きがあった。
「全ての魔力発動機を起動しました。ゲートを開きます」
 その声に続き、西側の壁の一角が大掛かりな機械仕掛けでキリキリと音を立ててせり上がり、第二の区域へと続く出口となった。
「みんな、行くよ!」
 ロンドの掛け声に、皆うんと頷いた。

 

 赤い髪をなびかせ、直線的な素早い動きで魔物を貫くロンドと、相手の攻撃を盾で受け流し、返す刀で斬りつける流れるようなナイトのコンビネーションは、まるで舞踏会で優雅にダンスを踊っているように美しかった。
 それに、のらりくらりとしたドランクの動きが変調を加える。
 メルティが魔物を混乱させ、RRとアインのメテオがそれを焼く。そして、生き残った魔物にスノウが使役する二頭のユニコーンが止めを刺す。
 例え、魔物の反撃を受けて傷ついたとしても、シップの癒しの呪文がそれを丁寧に回復した。
 第二の区域も、魔物で溢れかえっていたが、八人の冒険者は、各々がその力を活かんなく発揮し、掃討していった。
 ナイトのソードが最後の魔物の心臓を貫いたとき、また、キリキリと音を立て、第二の区域の西側の壁に、先へと続く出口が出現した。
「大丈夫か? ナイト」
「大丈夫です!」
 ロンドが聞くと、ナイトは大きく肩で息して答えた。どうやら息を整えるぐらいの時間は、とった方がよさそうだ。
「少し休もう。アイン、シップは支援魔法を掛けなおして。この先、まだ長いからね」
 支援WIZとビショップはうんと頷くと、持続時間があとわずかとなった支援魔法を全員に向かってかけなおした。
 その間に息を整える。
「ロンドさん、今、この『秘密ダンジョン』のどれぐらいまで来てるんですか?」
「まだ、半分も来てないさ」
「そうですか……」
 強力な魔物の群れで溢れかえる区域を2つも攻略したというのに、それがまだ半分にも満たないと聞くと、溜息が出そうになる。しかし、溜息なんてついている場合じゃない。自分はロンドに頼りにされているのだから。
 ナイトは両の掌でパンと自分の頬を叩いて気合を入れた。
「行きましょう!」
「そうだね」
 そうナイトに返事を返して、アインとシップを確認する。
「支援魔法は、かけなおしました」
「よし、行くよ」
 また、うんと頷くと、一行はロンドを先頭に開いたばかりの出口を通って、第三の区域へとその歩を進めた。
 出口から先に進むとそこは広い通路だった。そこを道なりに右に曲がると、左手に扉がふたつ並んでいた。
 通路は更に先に続き、そして唐突に行き止まりになっていた。
「どっちの扉に行けばいいんだろ?」
「勿論、両方さ」
 答えると、勢い良く手前にある扉を開く。
 扉の向こうは、第一の区域、第二の区域の約半分の大きさの部屋だった。約半分とは言え、やはりちょっとした広間と言える。
 その広間にいた者達が、一斉にこちらを振り向いた。
「侵入者だ!」
「こんなとこまできやがって!」
「どっから入ってきたんだ!」
 口々に叫ぶと、剣を手に襲い掛かってくる。
「この人達、人間なの?」
「元はね」
 メルティの問いに、襲い来る剣を槍で振り払って、ロンドが答える。
「この『秘密ダンジョン』にいるベアリークの手下は、全てヤツの実験体さ。最早、人間じゃない。魔物と同じさ」
 そう言って、襲い来る手下の胸に槍を突き立てる。手下は口から血を吐いてその場に倒れると、床に黒いシミを残して消えた。そのシミさえも時間とともに薄くなって消え去った。
「こいつらは、素早い。油断してるとやられるよ!」
 ロンドが全員に激を飛ばす。
 確かにロンドの言うとおりだった。
 広間にたむろしていたベアリークの手下どもは、その素早さを生かして、武器による攻撃をかいくぐり、隙をついて剣で反撃した。
 それでも、地力に優る八人の冒険者達は、徐々に駆逐していった。
 そして、広間の中にいた全員を倒したときだった。
 広間の真ん中におぼろげな光が現れたかと思うと、見る間に実体化し、ひとりの男が出現した。男は自分を取り囲む八人の冒険者を値踏みするように眺めると、忌々しそうにツバを吐いた。
「侵入者よ、我が手の者を倒したぐらいで、いい気になるなよ」
 おもむろに剣を鞘から引き抜いて構えると、
「このカルバタルが思い知らせてくれる! くらえ!」
と、叫んだ。
「うおおおぉぉぉ!」
 掛け声と供にナイトが一気に間合いを詰め、ソードの一撃を喰らわす。しかし、袈裟懸けにしたはずのソードは、なぜか空を切り、いつの間にか後ろにまわったカルバタルの剣が、ナイトの脇腹に刺さっていた。
 続けてロンドが繰り出した槍が、確実に心臓を貫くはずだったが、それもまたなぜかすり抜けた。
 男は二頭の神獣の角も、人間業とは思えない素早さでかいくぐり、ドランクの変則的な技でさえ、まるで先の動きを予想していたように、ことごとくかわした。
「こいつ、素早いだけじゃない」
「え?」
 スノウの言葉に思わずアインが聞き返す。
「スピードだけでは、コルドとチルドの攻撃はかわせない」
 普段冷静なスノウの声に、ほんの僅かあせりの色が見える。
「メルティさん! ウサギの術で動きを止められませんか!?」
「ダメなの。さっきからやってるんだけど、動きが速くてうまく術がかけられないの」
 メルティは泣きそうな声でそう答えた。

 

 

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