【リプレイ風小説 第5話 鍵消失】

 

ACT.12 救出


「ハンナ」
 まどろみの中、自分を呼ぶ声がする。
 体が重い。もう少し眠らせて。
「ハンナ」
 もう一度声がする。
 懐かしい声。
 そうだ、この声は。
「ねえ・・・さん?」
 うっすらと目を開けると、薄暗闇の中に自分と同じ赤い髪をしたロンドの、心配そうな顔が見えた。
「ハンナ、起きて。目を開けて」
「姉さん」
 ようやく目を開けたのを見とめると、ロンドの心配顔がほっとして緩んだ。
「ハンナ。オフィサークの左手はどうすればいいんだ?」
 包んでいた布を解いてオフィサークの左手をハンナに見せる。
「姉さん、じゃあアイツを、オフィサークを倒したのね」
「ああ」
 ロンドは大きく頷いて見せた。
「扉の前の床に手形があるわ。そこに左手の掌を当てて」
 言われるままに、オフィサークの左手を扉の前の床にある手形にピタリと当てる。ほんのりとした光が左手を包む。
 暫くして、ガチャリと鍵が開く音がした。
「姉さん!」
 もどかしく扉を開けて牢から出ると、ハンナはロンドの胸に飛び込んだ。それをギュッと抱きしめる。
「生きててよかった」
 わずか十日ばかりの間に痩せて細くなった妹の肩を抱き自分と同じ赤い髪を撫でる。
「もう大丈夫だから」
「姉さん」
 暫くの間、幼子のようにロンドの胸に顔を埋めてから、ハンナははっと気づいたように顔を上げた。
「アタシ、ひとりだけ助かるわけにいかない。仲間を見捨ててなんて行けない」
「大丈夫」
 赤子をなだめるように、ハンナの背中をとんとんと叩く。
「大丈夫。アタシの仲間がうまくやってるから」

 

 ナイト、メルティ、RRの3人は、『地獄への扉』を通って詰め所まで来ていた。
 乱雑に物が押し込められた机の引き出しの中を探る。
「本当にここにあるんですか?」
 ひっかき回しながらナイトが聞く。
「ああ」
 軽く首肯する。
「絶対にここにあるはずだ」
 RRは信念を持って答えた。
「解毒剤ってひと言で言われても、どんな形をしてるんです?色は?大きさは?」
「小瓶の中に入っている、緑の液体がそうだ」
 簡単に説明する。
「それって、こんな感じのヤツ?」
 メルティが物が散乱した机の上から、ひょいと小瓶を摘み上げて小首をかしげた。小瓶の中で鮮やかな緑色の液体がゆれていた。

 

 ナイト達3人はロンドとハンナに合流すると、先ほどの扉のトラップが復活する前に、急いで傭兵達を閉じ込めた檻までとって返した。
 戻るときに、いやがるハンナを「僕がリーダーですから」と言ってナイトは無理矢理その背に負ぶった。
 ちょっぴりはにかんだ表情でナイトの背に負ぶさるハンナを、ロンドは微笑んでながめた。自然と顔の表情が緩むのが自分でもわかった。
 再び檻の前まで戻ってくると、閉じ込められた傭兵達は相変わらず扉に向かって体当たりを断続的に続けていた。
 しかし、トミー、シップ、バイトの3人がかりで押さえられた頑丈な扉は、体当たりされる度にガシャンと音を立ててゆれるだけで、びくともしなかった。
「それで、どうやって解毒剤を飲ませるんです?」
「いや」
 RRは首を横に振ってナイトに答えた。
「こいつを飲ませることはできないだろう」
「じゃ、どうするんです?」
 困惑して聞き返す。
「直接、体の中に解毒剤を入れる。武器に毒を塗る要領でな」
 それからRRの指示通り、慎重にひとりづつ檻から出して、メルティのウサギの魔法で動けなくしてから、ナイトが解毒剤を塗ったソードの先を突き刺した。
「はっ!俺はいったい何をしていたんだ?」
 暫くすると、憑き物が落ちたように傭兵は正気に戻った。
「さて、オフィサークも倒したし、ハンナさんも、仲間の傭兵さんも助けたし、任務完了ですね」
「そうだな」
 ナイトの言葉に、ロンドが、そして皆が頷いた。
「それじゃぁ、戻りましょうか。ハンナさん出口はどこですか」
「わかりません」
「え?」
 ハンナは困った顔をして答えた。
「アタシ達、脱出する方法を確認する前に捕まってしまったので、この『秘密ダンジョン』から出る方法がわからないんです」

 

 

<<前へ                        <戻る>                     次へ>>