【リプレイ風小説 第5話 鍵消失】

 

ACT.3 地獄への扉


「ふさけやがって」
 口汚く罵るとロンドはツバを吐き出した。
「『天国への扉』に『地獄への扉』だって?どっちに行っても、あの世行きってワケかい!」
「大丈夫です!自分がそんなことにはさせませんから!」
 生真面目にも、ロンドのひとり言にナイトが答える。
「頼もしいねぇ、坊ちゃん。非戦闘員のオイラとしてはその言葉を信じたいもんだね」
「任せてください」
「おー、勇ましいこと」
 どんと胸を叩いたナイトにちゃちゃを入れると、スニークはチラリとRRに視線を送って肩をすくめてみせた。
「それで、今度はちゃんと鍵は開けられるんだろうね?」
「そう急かしなさんなって、ロンド姉さん。今、開けるからさ」
 言って鍵穴を覗き込むと、細い針金のような道具を出して、その先を鍵穴へと差し込んだ。針金の先で中をさぐるようにゆっくりと動かす。
「早くしないと、扉をたたき壊すよ!」
「もうちょっとだから静かにして待っててよ。全く、傭兵ってやつはせっかちでいけねえや」
 ぶつぶつ文句をいいながらも作業を続ける。鋭敏な指先で針金の微妙な感覚を感じる。スニークは意識を更に指先に集中した。いつもの癖で無意識のうちに下の唇を噛む。
 カチリと音がした。
「ビンゴ!」
「うまく開錠できたようだな」
「うん、成功だよ。あ、そうかアニキ達にも『見える』んだったね」
 リトルウィッチの魔法がパーティーの仲間全員に『シーフの目』と同じ能力を与えていることをスニークは思い出した。最初赤く光っていた『地獄への扉』が鍵を開けた今では光らなくなっているのが皆にも見えているはずだ。
「そんで、誰が先頭で行くのさ」
「自分が行きます!」
 言うが早いか、ナイトは『地獄への扉』を勢いよく開けた。
「チョット待ちな!迂闊に突っ込むんじゃないよ!」
 ロンドが慌ててその後を追う。
 続いてトミーとバイトも扉の向こうへと消えていった。
「坊ちゃん、張り切っちゃってるね」
「少年とは向こう見ずなものです。若さゆえの特権ですね。きっと神が正しき道に導いてくれるでしょう」
「そんなもんかなぁ」
「さぁ、私達も後に続きましょう!」
 シップが促して残る4人も後を追った。

 

 バイトが大きく狼の咆哮を上げた。それが合図だった。
 『地獄への扉』の向こう側に3体のオーガがいるのを見てとると、皆は一斉に襲い掛かった。不意をつかれたのにも関わらず、オーガはその巨体に似合わない機敏な動きで応戦した。
 ナイトは、力任せに振り回されたオーガの棍棒を盾で受け流し、受け流すのと一連の動作でソードを繰り出した。更に、オーガの2撃目をかわして今度はロンドと体を入れ替え、鋭い槍のひと突きがオーガを貫く。流れるようなナイトとロンドのコンビネーションはまるで円舞曲を踊っているように美しかった。
 トミーの戦い方はそれとは全く対照的だった。
 オーガの振り回す棍棒を両手持ちの大剣で受け止めると力任せに押し返した。オーガと見紛うばかりの巨漢のトミーは、力においても互角以上だった。
 そして、バイトはやられる前にやる戦法と言えた。
 ゆらゆらとゆれる尻尾でリズムをとり、高速で規則正しく鋭い爪を繰り出して、オーガを引き裂くと、あっと言う間に全身がオーガの返り血に染まった。
 当然、オーガもやられっぱなしというわけではない。突起の着いた巨大な棍棒を力任せにバイトに叩きつける。
 グシャリと骨が砕ける音がした。
「うへ!痛そう」
 思わずスニークが声を上げた。しかし、バイトはお構いなしに全く同じリズムで爪を繰り出し続けた。
 すかさず、ビショップのシップが癒しの呪文をバイトにかける。
 そこへ大きく振りかぶったオーガのニ撃目が・・・ニ撃目が来なかった。
 オーガは巨大な棍棒を振り上げたまま動かなかった。そのオーガを中心に円を描いて数羽の白兎がぴょんぴょんと跳ね回っていた。オーガはまるで白昼夢でも見ているかのように虚ろな目で静止していた。
「ナニ、これ?」
 スニークが特大のクエスチョンマークを飛ばしたその横で、リトルウィッチの少女が片手に持ったバトンを白兎達に向かって指揮棒のように振り回していた。
「応援よ」
 目を丸くしているスニークにメルティはうふふと笑ってひとつウィンクした。
「なんかすげーな、不思議ちゃん」
 スニークは素直に感想を漏らした。
「今のうちに倒すぞ」
 RRは杖を振り上げて空中に五つの火球を出現させ、オーガに向かって放った。

 

 

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