【リプレイ風小説 第3話 ウラワザ】

 

ACT.10 奪取


一行は、『封印の紋章』が壁に描かれていた部屋へと戻ってきた。壁はあとかたもなくなくなり、その奥に広間が出現していた。
「結局さ、開けられる棺桶は全部開けちゃったよね」
「そうですね。結局一番最後にした部屋の棺桶が『解除の紋章』でしたね」
「支援ちゃん、勘が悪いんだもん」
「自分のせいですか?」
「支援ちゃん博打で勝ったことないでしょ?」
「博打なんてやりませんよ」
「うん、やらない方がいいね」
「まぁまぁ、よいではござらんか。結局封印は解除できたのだし。ささ、中に入るとしましょう」
そう言ってサイはスキップするように広間へと入って行った。
「あ、待ってください、トラップが・・・」
「ないよ。モンスターもいないね。封印されてた部屋だし、ここを造った人も、もういいやって思ったんじゃない?」
「そうですか、じゃあ、みんなで中へ入りましょう。一応警戒はしてくださいね」
一行は封印されていた広間へと入っていった。
「ふ〜ん、なんか広い部屋だね」
スニークは辺りをキョロキョロした。広間は横に長い長方形で、小部屋を5つ合わせたぐらい広かった。
「いいもの見つけただーよ」
「ナニナニ?ゴンちゃん」
「ほねほねだーよ」
見ると、左右の壁に2体づつ右手に剣、左手に盾を持った骸骨が吊り下げられていた。
「お洒落なインテリアだーよ。羨ましいだーよ」
「そうなんだ。変わってる〜」
変わってるどころの騒ぎじゃないと誰もが思ったが、それを突っ込むものはひとりもいなかった。
そして、広間の奥の丁度真ん中辺りに、今までの倍の大きさの石棺が置かれていた。その表面には様々な彫刻が彫られ、いたるところに宝石がちりばめられていた。今までの石棺より100倍は豪華だった。
「うひょー、すげー棺桶!外側がこれだと中身も期待しちゃう〜」
「封印された隠し部屋ですからな。古文書と一緒に金銀財宝もあるかも知れませんな」
「俄然やる気出る〜!」
喜び勇んでスニークは石棺の蓋を持ち上げてみようとした。しかし、今までの倍の大きさの蓋は重くてびくともしなかった。
「これさ、重くて全然動かないよ」
「大きくて立派ですもんね。力を合わせて開けるとして、開けた途端に紋章が発動しませんかね?」
「それは大丈夫と思いますがな。拙者、今までの紋章を勘定しておりましたが、『苦痛の紋章』が4、『召喚の紋章』が2、『転移の紋章』が2、そして『解除の紋章』が2でしたな。この蓋の裏に紋章があるとすると奇数になってしまいますから、まず、紋章はないかと」
「じゃぁ、紋章がないことを前提として蓋を開けることに専念しましょう」
早速3人で蓋を開けようとしたがだめだった。5人でやってみたが、それでも動かなかった。結局、全員がかりでようやく重い石の蓋を開けることができた。
サイの言ったとおり、蓋を開けても紋章は発動しなかった。
石棺の中には、今までの倍はある大きなミイラが横たわっており、その周りにギッシリと金銀財宝が敷き詰められていた。
「うひょー!お宝〜ッ!」
「それは後にしてください、スニークさん。後ろに下がって」
アインの指示に従い全員が石棺から距離をとって警戒した。しかし、今までと違って石棺の中のミイラは静かに横たわったままで一向に動き出す気配がなかった。
「大丈夫・・・なのかな?」
「動きませんね」
「支援殿、あれを」
指差す先を見ると、ミイラの手にスクロール(巻物)が握られているのが見えた。
「あれが古文書に相違ござらん。遂に見つけましたな!」
「よかった。あの古文書を『番人』に持っていけばいいんですね」
「左様ですな。その前にちょっと拝見」
サイは古文書に手を伸ばした。しかし、いくら引っ張っても古文書はミイラの手から離れなかった。
「あいや、弱りましたな。ビクともしませんが」
「そうなの?オイラもやってみる」
今度はスニークが古文書を取ろうとしたが、やはりミイラの手から離れなかった。
「全然ダメだよ」
「支援君。君がやってみろ」
「え?自分がですか?RRさん」
アインは怪訝そうに答えた。
「そうだ。『番人』と話して直接頼まれた君がやるんだ」
「やってみます」
一同が固唾を飲んで見守る中、アインは古文書に手を伸ばした。手にとって引っ張ると、古文書はスルリとミイラの手から離れた。
それと同時にミイラの目がカッと開いた。ゆっくりと上体を起こすミイラの心臓目掛けて、すかさずパラレルが矢を放つと、ミイラは真っ赤な目でパラレルをギロリと睨んだ。顎の関節が外れたようにカクンと口が開き、口から毒々しい緑色のガスが吐き出される。それを8人全員が吸い込んで咳き込んだ。あっと言う間に毒が全身に回り体力を奪う。毒のせいで皆の顔がみるみる緑色に変わっていった。
苦しい息の中、アインはアースヒールの呪文を唱えたが、毒に蝕まれたままの身体は回復しても直ぐにまた体力を奪われてしまう。
「ダメだ、支援君。先に解毒を!コソドロ!」
「ガッテンだ!アニキ!」
スニークは次々と仲間のミゾオチに手を触れて『解毒』していった。その間にミイラは立ち上がり、今まさに石棺の外へと出ようとしていた。それを阻止すべくドーンが氷の一撃をお見舞いする。
「前に出ちゃダメだよ、チリのアニキ!解毒がまだじゃん」
「知るか!コイツは俺が食い止める。その間に皆を回復しろ!」
2発、3発とミイラに杖を打ち据えるドーンの顔が、苦悶の表情に歪む。
「援護するわ」
巨大ミイラの注意を逸らすように、パラレルはミイラの頭目掛けてどんどん矢を撃ち込んだ。その間、アイン、サイ、RRの3人のウィザードは、解毒された者から順番にアースヒールを唱え、毒で失われた体力を回復していった。
ゆっくりと振り上げたミイラの両の腕がドーン目掛けて振り下ろされようとしたとき、2体のファミリアの槍が左右から脇腹に突き刺ささり、ミイラの動きを封じた。
「後はウチのコ達に任せて、下がって!」
フラウが叫ぶ。
「大丈夫なのか?」
「うん。ウチのコたちタフだから、平気だよ」
「ウキーッ!」
「ウキャーッ!」
一旦下がってスニークの解毒を受けると、ドーンはグイと『ヒーリングポーション』を飲み干した。強い刺激で喉が焼け、その分体力は回復する。更にアインのアースヒールがドーンの身体を癒した。
ドーンはアインを一瞥して、フンと鼻を鳴らした。
「おいおい、もたもたしてるヒマは無いみたいだぜ、新手が来やがった」
見ると左右の壁に吊り下げられていた骸骨が壁から離れ、右手に持った剣を振り回しながら近づいて来ている。
「メテオで一気に片をつける!」
「承知した、RR殿!」
ファミリアの槍で動きを封じられた巨大ミイラ目掛けて、2人のウィザードは合計7発の『メテオシャワー』を落とした。巨大ミイラの身体は燃え上がり宝物の詰まった石棺の中へと崩れ落ちた。
その間メテオの爆風を背に、ドーンが右の骸骨を2体、スニークとゴーンが左の骸骨を1体づつ片付けた。
「ヒドイよ、メテオのアニキ。お宝が台無しだよ!」
「いいんですよ、古文書は手に入れたんですから。さあ、『番人』に渡しに戻りましょう」
スニークはひとりぶつぶつと文句を言ったが、それはアインに黙殺された。8人は使命をまっとうするため、『番人』のところへと引き返した。


「古文書を返せ・・・元に戻せ・・・」
宙を漂う幽体にドーンが容赦なく杖を振り下ろすと、恨めしげな声を上げていた幽体は天へと昇って行った。
「あれって、何ですかね?古文書を返せって言ってましたけど」
「さすれば、古文書探索に失敗した者の成れの果てでしょう。我々も失敗していたら、ああなっていたのかも知れませんな」
「死んでまで古文書に固執するとは、憐れなもんだな」
ドーンはフンと鼻を鳴らした。
「いや、拙者、彼奴らの気持ちが分かるような気がします。拙者もこの古文書を求めて止みませんでしたからな」
その言葉に答えられる者は誰もいなかった。
途中、何体かの霊体を天に返して、8人は最初『秘密ダンジョン』に入って来た地点まで戻ってきた。
「じゃぁ、古文書を『番人』に渡してきますね」
「支援殿、『番人』に渡す前にちょっとだけ見せてもらえませんかな?」
「ダメですよ。最初に言ったじゃないですか」
「あいや、そうでしたな」
サイは心底口惜しそうな顔をした。
アインが『番人』と話して古文書を渡している間も、何か思いつめたようにずっとその背中を見つめていた。『番人』と話し終わると、空中に赤く光る『秘密ダンジョン』の出口が現れた。
「皆さん、お疲れ様でした。古文書を『番人』に渡して来ました。報酬も貰ってきましたよ」
そう言って、金貨がギッシリと詰まった皮袋を見せた。
「そう来なくっちゃ!」
「じゃぁ、脱出しましょうか」
「あ、いや、その前に、拙者、皆さんに話があるのですが」
「どうかしたんですか?サイさん」
いつになく真剣なサイの表情に、皆、ただならぬ気配を感じた。
「拙者、ここに残ることにしたでござる」

 

 

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