【リプレイ風小説 第3話 ウラワザ】

 

ACT.6 解除


 
自然と入ったように巧妙に見せかけた壁のひび割れに、ダガーの薄い刃を差し込むと、スニークはその奥に隠されたトラップの『コア(核)』を探った。鋭敏な指先の感覚と研ぎ澄まされた勘がダガーの刃先がコアに到達したことを知らせる。いつもの癖で無意識のうちに下の唇を噛む。ダガーを持つ手にグイと力を入れてそのままコアを破壊する。瞬間、床が青白く光ったかと思うとすぐに沈黙した。
「ビンゴ!」
スニークは指をパチンと鳴らした。
「トラップは解除したから、もう部屋の中に入っても大丈夫だよ」
「今のトラップって、危険なトラップなんですか?」
「うん。滅茶苦茶危険だよ、支援ちゃん」
「ひっかかると、どうなるんです?」
「腹が下る」
「えぇ!?なんて卑劣な!」
一同は青ざめた。
「本当ですか?」
「嘘だよ。本当は冷気が噴出して凍えさせる『コールドトラップ』だよ。うまく動けなくなることに関しては、腹下しと同じだけどね」
「なるほど。では命にかかわるようなものではないんですね」
「うん。トラップ自体はね。オイラが見たところだと、この『秘密ダンジョン』はトラップだらけだけど、この手の身体に異変を起こすトラップばかりで、ダメージを受けて『死』んじゃうようなヤツは無いみたいだよ。でも、満足に動けなくなったところをモンスターに襲われたら結果は同じだけどね」
アインはゴクリと生唾を飲んだ。
「オイラがイイって言うまで、絶対にオイラより前に出ないこと。それさえ守ってくれれば大丈夫だから」
「わかりました。皆さんも肝に銘じてください」
一同はうなずいて了解の意を示した。
「で、ここもさっきと同じぐらい狭い部屋なんだけどさ、今度は誰が行く?」
スニークは仲間を見回した。
「支援君、君がリーダーだ。君の決定に従う」
「分かりました」
RRに言われて、アインは逡巡した。
「じゃあ、今度はスニークさんとドーンさん、それとパラレルさんでお願いします。自分は入り口で待機します。あとの方は部屋の外で待っていてください」
「おっけー」
指示に従って、3人は小部屋の中へと入って行った。この部屋にも先ほどと同じように石造りの棺桶が隅に置かれていた。
「棺桶にトラップはないよ」
「わかりました。スニークさん、蓋を開けて下さい。ドーンさんとパラレルさんはすぐに攻撃が出来るように待機して。ダメージを受けたら自分がすぐに回復しますから」
「ちょっと待った。拙者にも蓋を開けるところを見せてくださらんかな」
後ろからサイが声を掛けた。
「見る分には構いませんが、離れていてください。サイさんにもしものことがあったら困ります。貴方の知識はこの先も必要ですから」
「委細承知しました。では遠くから眺めさせていただくことにしますかな」
サイは入り口に陣取ったアインの肩越しに遠目に小部屋の中を覗き込んだ。
「いい?1、2の3で開けるよ」
ドーンとパラレルはそれぞれ使い慣れた武器を手に戦闘態勢を整えると、コクリと頷いた。
「いつでもどうぞ」
「開けます。1、2の3」
重い石棺の蓋を力を込めて一気に持ち上げると同時に、またさっきと同じように、蓋の裏が光った。しかし、今度は激痛は感じず、代わりにどこかでゴゴゴという音がして『秘密ダンジョン』全体が小刻みに振動した。
「今のはなんですか?サイさん」
アインが尋ねた。
「はて。紋章が発動したように見えましたが、何が発動したかは、調べてみないことには解りませんな」
「あのー、お取り込み中申し訳ありませんが、やっぱり出たんですけど」
音と振動に一瞬気をとられた一同が石棺へと注意を戻すと、中から包帯でぐるぐる巻きのミイラがゆっくりと立ち上がるところだった。スニークがひらりと身をかわすと間髪いれずにパラレルの放った矢がミイラの眉間を貫通した。勢いでミイラの左目が太い神経の束で繋がったまま飛び出し、ぶらぶらとぶら下がって揺れた。そこへドーンの杖が容赦なく振り下ろされた。


「ほほう、成る程。実に興味深い」
ミイラを倒した後、蓋の裏に描かれた紋章を調べてサイはひとり悦に入っていた。
「何の紋章なんですか?さっきの音はなんなんです?」
「これは『解除の紋章』ですな、支援殿」
「それは何です?」
「『解除の紋章』は『封印の紋章』と対をなしていましてな、ダンジョンなどでよく使われていた紋章で、例えば宝の部屋に通じる道を『封印の紋章』で封印し、宝を取り出すときは『解除の紋章』で封印を解除するといった具合に使われていた紋章でして」
「てことはさ、ござるのダンナ。さっきの音は古文書を隠したところに通じる封印が解けたってこと?」
「正確には封印のひとつが解けたということなのでしょうが、古文書に一歩近づいたことは確かですな」
「なんかのってきたね。どんどん棺桶を開けて行こうよ」
「どの道、我々にはそれしか方法がない。コソドロの言う通りだ。先を急ごう」
スニークの軽口にRRが同調して言った。
「あれ?ゴンちゃんなんか楽しそうだね」
フラウがネクロマンサーのゴーンに向かって言った。
「棺桶を片っ端から開けるなんて、想像するだけでウキウキするだーよ」
「そうなんだ。変わってる〜」
そりゃ、ネクロマンサーなんだから当たり前だろうと皆が思ったが、誰も突っ込む者はいなかった。

 

 

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