【リプレイ風小説 第3話 ウラワザ】

 

ACT.4 古文書


「皆さん、お待たせして申し訳ない」
サイはすまなさそうに6人の仲間に向かって言った。
「遅いんで心配していたんですよ、サイさん。何かあったんですか?」
「いや、それがですな支援殿。お恥ずかしい話ですが、拙者、ゴーレムめにやられまして、しばらく『死』んでおったという次第でして」
「『死』んじゃったんだ!可哀想」
「いやいや、拙者が未熟なせいでして、ちっとも可哀想ではござらんよ、お嬢さん」
テイマーの少女に答えながら、サイは頭をひねった。はて、この少女とはどこかで会ったような気がする。
「それで、どうやってここまで?まさかアリアンに『帰還』してから、歩いて来たわけじゃないですよね」
「左様。通りがかりの親切な御仁に『生き返』らせて貰ったうえ、ここまで案内して貰った次第でして」
「ここまでですか?サイさんがここに来たときひとりでしたけど」
「それが隠れるのが得意な御仁でしてな。さっきまで一緒に歩いておったのですが、はて、どこにおられますかな」
「ここだよ」
サイの後ろから声がした。その声に一斉に全員の注目が集まると、影に隠れて丁度死角になるところから、黒装束の男が姿を現した。
「コソドロさんだ!」
「嬢ちゃん、久しぶり。アネさんも」
黒装束の男は、昔馴染みのテイマーと弓使いに向かって声をかけた。
「こんな所で会うなんて奇遇ね、スニーク。シーフの貴方がタダでこんな所まで来るとは思えないけれど、何をしにここへ?」
「ひでぇなぁ、アネさん。おいらだって冒険者のはしくれなんだぜ。冒険話があればどこへでも行くさ」
「儲け話の間違いじゃないの」
「いや、勿論それもありだけどさ。今日はメテオのアニキに呼ばれて、わざわざ来たんだぜ」
「RRに呼ばれて?」
「そうだけど」
状況をよく飲み込めないスニークとサイ、ついでにフラウを除いて、全員がRRの方を見た。
「そういうことだ」
皆の視線に答えて、RRが平然と言った。
「その男が8人目だ」
「ビショップを連れて来るんじゃなかったんですか!?」
「ビショップを連れて来るとは、ひと言も言っていない」
くってかかるアインに、またも平然と言ってのけた。
「『狂乱の魔術師』殿は、またもご乱心ってわけか」
フンと鼻を鳴らして皮肉を言ったドーンを、アインはキッとひと睨みした。
「ビショップなしで、『秘密ダンジョン』を攻略できるわけがないじゃないですか!」
「廃坑は攻略した」
「あのときだって何度も死に掛けたじゃないですか!また仲間を危険な目に合わせるつもりですか!」
「安全な冒険などない。無意味だ」
「ふざけないで下さい!」
「それにビショップはいない。いない者を探しても時間の無駄だ」
「自分が見つけてきます、必ず!」
「いつだ?どれくらいかかる?」
「すぐにでも!」
「やめて!」
涙声でフラウが叫んだ。
「やめてよ、喧嘩しないで!」
「これは大事なことなんです、フラウさん。皆の命に関わることなんです。ビショップがいるのといないのとでは雲泥の差なんです。それをシーフなんかを連れて来るなんて」
「シーフなんかじゃないもん!コソドロさんはいいひとだもん!仲間だもん!」
そこまで言うとフラウはパラレルに抱きついてわんわん泣いた。
「なんと言われてもダメです。シーフにビショップの代わりは務まりませんから」
「支援ちゃんのバカ!コソドロさん仲間だもん!いっしょに行くんだもん!」
「フラウさん・・・」
大声でわんわん泣き続けるフラウに、アインはすっかり気勢を削がれしまった。
「成る程、そういうわけでしたか」
ようやく事態を飲み込めた風にサイが口を開いた。
「いやいや、ビショップ殿がいないとなれば、シーフ殿は適任かも知れませんな」
「どういうことです、サイさん」
このメテオWIZは一体何を言い出すのだろう。アインは訳が分からなかった。
「拙者、かねてからこの界隈にある遺跡群についていろいろと調べておるのですが、『警備兵墓』『魔法傭兵の墓』『傭兵達の大きな墓』『呪いの墓』そしてこの『小さい傭兵の墓』と、その5つの遺跡と更に地下で繋がる『過ぎた栄光の展示場』は、謎の多い遺跡でしてな。実に興味深い」
「知ってます。どの遺跡にも悪霊が棲みついていて、冒険者の間では有名だけれど、なんのために建てられたのか誰にもわからないんですよね」
「左様。それにこれらの遺跡には、それぞれ別の『秘密ダンジョン』へと続く入り口がありますな」
「それがどうかしましたか?」
「その『秘密ダンジョン』にこそ、遺跡群の謎を解く鍵があると思われるのです。殊に、この『小さい傭兵の墓』の『秘密ダンジョン』に眠る古文書が、重要な鍵であると考えらるのです」
「はぁ。それで、どうしてシーフが適任だと?」
サイはコホンとひとつ咳払いをして続けた。
「古い文献を紐解きますと、『小さい傭兵の墓』の『秘密ダンジョン』には、古文書を守るために、いろいろな仕掛けがされているということですな」
「トラップ・・・ですか?」
「左様。トラップばかりとは限りませんが、充分に考えられますな。ビショップ殿がいればトラップに掛かったとしても治癒の呪文で対応できますが、いないとなれば、シーフ殿にトラップを解除してもらいながら進むのが次善の策かと。さすれば『秘密ダンジョン』の危険の半分は回避できることでしょう」
「そういうことだ」
RRがサイの言葉を引き取って言った。
「危険の半分ね」
ドーンがフンと鼻を鳴らした。
「支援ちゃん。コソドロさんもいっしょに行っていい?」
いつしか泣き止んだフラウがアインの顔をじっと見つめた。両の頬に涙の跡がくっきりとついていた。
「分かりました。この8人で行きましょう」
「ヤッター!」
渋々ではあったが、兎に角いっしょに行けるのが嬉しくて、フラウはぴょんぴょん跳ねて喜んだ。ネクロマンサーのゴーンと2体のファミリアと手をつないで輪になってスニークの回りをぐるぐると回った。
「嬢ちゃん、いいよ、わかったよ。ありがとう」
ちょっぴり気恥ずかしくて止めるように言ったが、フラウ達は目が回って動けなくなるまで回り続けた。
その様を見ながら、アインはひとつため息をついた。この決断が吉と出るか凶と出るかわからない。しかし、今はフラウ達といっしょに最後の仲間を素直に歓迎しよう。
「準備はいいですか?皆さん。では、入りますね」
卵大の輝くクリスタルを取り出して、あちこち崩れかかっている石造りの壁の一角に向かって高く掲ると、『ポータル・クリスタル』を掲げた壁が赤く光り『秘密ダンジョン』の入り口が開いた。アインの身体は赤い光の中へと吸い込まれて行った。
残った冒険者も、次々と赤い光の中へと飛び込んでは消えて行った。
「コソドロ」
『秘密ダンジョン』の入り口へ飛び込もうとするスニークを、RRが呼び止めた。
「なにさ、アニキ」
「お前に期待しているのはトラップの解除ばかりではない。分かってるだろうな?」
「分かってるって。チェッ、メテオのアニキは相変わらず人使いが荒いなぁ」
チョッピリ毒づく。
「それに、メテオのアニキには借りがあるからね。キッチリ働くよ」
そう言うとスニークはウィンクして『秘密ダンジョン』の入り口へと飛び込んだ。
そして、最後にRRが赤い光の中へと消えて行った。

 

 

<<前へ                        <戻る>                     次へ>>