【リプレイ風小説 第2話 0.375】

 

ACT.7 コボルトの槍


 3人は、衝撃波以外の攻撃を受けないように、距離を保ちながら攻撃した。
スニークの手裏剣が突き刺さり、RRの『ファイアーボルト』の呪文が『クリーパー』の表面を焼いた。
そして、パラレルが高速で放つ矢が『クリーパー』のねめつく身体に突き刺さった。
『ファイアーエンチャント』の火の魔力を纏った矢は突き刺さった内側から肉を焼き、煙が幾筋も立ち昇った。
「やっぱ、アネさんの攻撃はすげーぜ!惚れちゃう!」
状況はスニークの軽口ほど未だ楽観的なものではなかった。
パーティーはパラレルという強力な『火力』を得た代償として、守りの要のビショップを失ってしまった。生き残った3人で『クリーパー』を倒さなければならないのだ。
「ビショップの言葉を思い出せ。みんな必ず助けるんだ。必ずだ!」
「おうよ!」
「ええ」
RRが飛ばした激に、2人は答えた。
しかし、パラレルは一抹の不安を覚えていた。微妙に狙いが狂う。引く弓にいつもとは違った違和感を感じる。何かが違う。と、矢をつがえていっぱいに弦を引いた瞬間、弓がまっぷたつに折れてしまった。
張力の行き場を失った弦は弾けてパラレルを打った。
頬からひと滴血が流れた。
「こんなときに・・・」
パラレルは毒づくと折れた弓を『クリーパー』目がけて投げつけた。
弓は『クリーパー』の身体に弾かれ、乾いた音を立てて『死』んだコボルトの方へと転がっていった。
コボルトの傍らで何かがキラリと光って見えた。
「RR、スニーク!2人とも援護して!」
「武器もないのに、何しようっての、アネさん!」
「武器なら、あそこにある!」
そう言ってパラレルが指差す先には、コボルトが使っていた槍が転がっていた。
「あの槍、使えるのか?弓使い!」
「得意じゃないけどね。でもこのまま何もしないで『死』ぬよりはましよ!」
「わかった。コソドロ!2人で『クリーパー』を引き付けるぞ!」
「おいらは非戦闘員だって言ったでしょ!人使い荒いなぁ、WIZのアニキは」
ひとしきり文句を言いながらも、スニークは手裏剣を構えた。
RRの杖の先から『ファイアーボルト』の炎の矢が『クリーパー』の鼻先を目がけて発射される。
「頭だ、頭を狙え!」
「がってん!」
スニークもまた手裏剣を頭目がけて投げつけた。
左右から頭を狙われて、『クリーパー』は困惑したように右に左にウロウロした。
その間も、5秒の間隔で死の衝撃波を発するのは休んではくれず、3人はその度に『ヒーリングポーション』を飲んでしのいだ。命がけの鬼ごっこだった。
シーフとウィザードが『クリーパー』を引き付けている隙を突いて、パラレルは身を低くして槍が転がっている方へと前進した。
あと数歩で槍を手にできるという所まで近づいたとき、パラレルの足元で、バキっと何かが折れるような音がした。
ついてないときと言うのは、こんな物かも知れない。
パラレルは先程自分が投げつけた折れた弓を踏んづけたのであった。
『クリーパー』は頭をパラレルの方へと向けた。触手が別の生き物のようにくねくねと蠢いた。
『クリーパー』が咆哮を上げた。
「やべーよ!アネさん見つかっちゃったよ!」
「走れ、弓使い!逃げるんだ!」
RRが叫んだのと、『クリーパー』が突進し始めたのと、パラレルが走り出したのが同時だった。但し、弓使いが走り出したのは、逃げるためではなく槍を拾うためであった。
パラレルがコボルトの槍を拾おうと手をのばしたとき、『クリーパー』はほんの目と鼻の先まで迫っていた。背筋を悪寒が走った。間に合わない。タイミング的には槍を拾い上げる前に『クリーパー』の一撃を受けるタイミングであった。が、突然、何かに引っかかるように『クリーパー』の突進が止まった。
『クリーパー』の足元の土が盛り上がるようにして波打ち、突進を阻んでいた。
「ナイス!アニキ!」
「速く拾え!あまり持たない!」
大地の魔法『ロックバウンディング』で『クリーパー』をその場につなぎ止めながらRRが叫んだ。
パラレルが槍を拾って身構えたのと、『クリーパー』が力任せに大地の魔法を破ったのが同時だった。
一旦、魔法で大地につなぎ止められたため突進の勢いは弱くなっていたが、軽量な弓使いを弾き飛ばすには充分であった。
パラレルは槍を持ったまま数メートル弾き飛ばされた。危うく岩に激突するところをスニークが受け止めた。
「スマナイ・・・」
パラレルがつぶやいた。
どこか切れたのか、口から血が出ていた。
そして、地鳴りが始まった。
パラレルは口に溜まった血を赤いポーションと一緒に飲み込んだ。
しかし『クリーパー』の体当たりを受けた分、明らかにパラレルの体力は減っていた。
「アニキ、アネさんに『アスヒ』を!ポーションじゃ回復が間に合わねえよ!」
スニークが叫んだ。
「ダメだ、届かない」
パラレルは、『アースヒール』の効果が及ぶ範囲よりも遠くへと弾き飛ばされていた。
ナイトを失ったときと同じ状況だった。
最悪の結果が脳裏をよぎった。
 

 

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