【リプレイ風小説 第2話 0.375】

 

ACT.3 発動


スニークが見つけた金貨を山分けすると、パーティーは来た道を戻って先へと進んだ。
しばらく行くと、またスニークが立ち止まった。
「今度はなんですか?コソドロさん」
「トラップだ。ダンナ達は離れててくれ」
スニークはしゃがみこむとダガーで地面に線を引いた。それがトラップが発動する境界線であった。
今度のトラップはヤバイ。今までのトラップよりひと回り危険だ。経験と勘が警告する。スニークは緊張した。背中を冷たい汗が流れた。

基本的に動物は好きだ。種類もいっぱい知っている。魔獣を操るビーストテイマーになろうと思ったのだって、それが理由のひとつであった。
しかし、こんな綺麗な羽は見たことがなかった。燃え盛る炎のように赤い色。この羽の持ち主である鳥はどんなに美しいことであろうか。フラウは知りたくてしょうがなかった。
「パラレルさん、そのベルトポーチにつけてる羽、それなんですか?」
「ああ、これ?」
フラウは思い切って聞いてみた。フラウは凛としたパラレルが苦手だった。なんとなく叱られそうな気がしていたのだ。
「これはお守りみたいなモノよ。兄さんに貰ったの」
「お兄さんですか」
「そうよ。ウィザードなの」
「あの・・・、ちょっと見せてもらえませんか?」
崖から飛び降りる思いで聞いてみた。どうか見せてもらえますように。フラウは心の中で祈った。
「いいわよ。どうぞ」
パラレルはベルトポーチから羽をはずすとフラウに手渡した。
羽はフラウの指先で炎のようにゆらゆらと揺れた。
「キレ〜イッ!」
フラウはまじまじと見た。わくわくして踊りだしたい気分だった。
「見て!ツンツク。綺麗だよ」
魔獣も主人にならってまじまじと見ていた。が、突然、羽にかぶりついた。コボルトは、あっという間に主人の手から羽を奪い取ると一目散に逃げ出した。
「あ、ダメ!ツンツク。返しなさい!」
「ウキャキャ!」
フラウは必死になってツンツクを追いかけたが、魔獣は素早い動きで逃げ回った。さながら鬼ごっこでもしているかのようであった。実際、ツンツクにしてみれば、ご主人様に遊んでもらっているつもりであった。
「待ちなさい!ツンツク。返しなさいったら!」
「ウギャ!」
フラウが叫べば叫ぶほど、魔獣は喜んで逃げ回った。
「フラウ!笛を!」
パラレルが叫んだ。しかし、ひとつのことに集中すると、他のことが耳に入らないタイプらしい。フラウは懸命にコボルトを追いかけ続けた。
「そっちはダメ!ツンツク。ぶつかる!」
叫んだときには遅かった。
闇雲に逃げ回っていた魔獣は、地面にしゃがみこんでいたシーフの背中に思い切りぶつかってしまった。
スニークは自分で引いた境界線を越えて、前のめりに倒れこんだ。
途端にトラップの『コア』が侵入者を探知した。
一瞬、地表に青白い炎が走り、次の瞬間には天井にまで届く大きな火柱が上がった。

「ごめんなさい、ドロボーさん」
フラウは『死』んだシーフに言った。
神妙な少女の横でコボルトはスニークの顔に近づいて、クンクンとにおいを嗅いでいた。と、おもむろに手にした槍の先でスニークをツンツンしはじめた。
「殺す!『秘密ダンジョン』をクリアしたら、寄せ鍋にして食ってやる!」
「やめなさい、ツンツク!ごめんなさい」
このやりとりを眺めていた一同は思わず笑ってしまった。腹を抱えて笑うパラレルのベルトポーチで赤い羽が揺れていた。
「パラレルさんも、ごめんなさい。羽壊れなかったですか?」
「大丈夫よ。魔法のアイテムだから、ちょっとやそっとじゃ壊れたりしないわ」
「よかった」
フラウは胸をなでおろした。
「あのー、そろそろ『生き返らせ』て欲しいんですけど、BISのダンナ」
『死』んだ者を『生き返らせ』ることができる、ビショップの最終魔法『リザレクション』。この魔法を使うには、膨大な『心の力』を必要とする。
シップは天に向かって『祈り』を捧げた。『心の力』が天から降りてくるのを感じる。充分に『心の力』が貯まったところで、シップは『リザレクション』の呪文を唱えた。
『死』んだシーフの血の気の失せた顔にだんだんと赤みが戻ってきた。
「仲間のために身を挺してトラップを解除するとは、まさにシーフの鑑ですね、コソドロさん」
まじめくさって、ビショップが言った。
「ちょっと違うんすけど・・・」
「いえいえ、わかってますよ」
スニークのちょっぴり困った顔を見ても、シップは訳知り顔で何度もうなづいた。 
 

 

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