【リプレイ風小説  第2話 0.375】

 

ACT.2 第6感


古都ブルネンシュティングから歩いて2日、バヘル大河の交差点付近に『蟲の洞窟』はあった。ようやく装備が様になってきた頃の冒険者達にとって『蟲の洞窟』に棲む蟲どもは、腕試しをするには手ごろな獲物と言えた。古都から程近いことも手伝い『蟲の洞窟』は冒険者が大挙してやってくることも珍しくはなかった。
その『蟲の洞窟』の奥深く『ポータル・クリスタル』を持つ者だけが入ることを許される『秘密ダンジョン』。並外れた強さで他の蟲の追随を許さない強大な蟲『クリーパー』が巣くう異次元空間へと8人の冒険者は来ていた。
ビショップのシップをリーダーに、トラップの解除を得意とするシーフのスニーク、鎧に身を固めた若き剣士ナイト、力自慢の戦士トミー、己が牙と爪を武器とする熱き野生のウルフマン・バイト、華麗なる弓使いのパラレル、魔獣コボルトを笛で操るビーストテイマーのフラウ、そしてウィザードのRRの8人だ。

「もう一度言っておくけど、死にたくなかったらオイラより前に出ないこと。ここのトラップはマジでヤバイんだ。じゃないと『クリーパー』を倒すどころかお目にかかる前に古都に帰る羽目になるぜ!」
いつも冗談混じりの口調で話すスニークの真剣な物言いに、一同はそれが重要なコトであることを悟った。
「確かにスニークさんの言うとおりですね。我々の目的は『クリーパー』を退治することですから。道中はスニークさんの指示に従って慎重に進みましょう」
シップの言葉に、異論を挟む者はいなかった。
「あと、オイラがトラップを解除してるときは、いいって言うまでは、離れて静かに待ってること!特に嬢ちゃん!」
「わかりました!ドロボーさんの言うとおりにします!」
「よろしい!って、ドロボーさんはないだろ。駆け出しとは言え、これでも冒険者のはしくれなんだぜ」
「駆け出し?」
フラウはスニークの言葉にちょっと小首をかしげた。
「だったら、コソドロさんだね!」
スニークの時が止まった。
「いい呼び名を貰ったじゃないか、コソドロ」
「WIZのアニキまで・・・」
一同は腹を抱えた。落ち込むスニークとキョトンとした顔のフラウを除いて。

ここまで一本道であった。曲がりくねってはいたが、一度も分岐はなかった。
パーティーはスニークを先頭にして、途中、いくつかのトラップの『コア』を破壊し、幾度か蟲の襲撃を退けて進んできた。
「待った」
不意にスニークが立ち止まった。
「どうしました?またトラップですか?」
「いや、分かれ道だ」
見ると道なりに続く本道とは別に、左へと続く脇道が出ていた。
「におう、におうぜ!オイラの第6感にビンビン感じる!」
言いながらスニークはひとり脇道へと進んで行った。シーフの探知能力なしで、どこにトラップがあるかわからない洞窟の中を歩きまわるのは自殺行為である。残された7人と1匹は、シーフの後をついて行くしかなかった。
本道からは死角になって見えなかったが、脇道に入って行くと、道はすぐに両開きの扉にぶちあたった。扉には閂がかかり蔦でがんじがらめにされていた。見た目に簡単には開けられそうになかった。
スニークは扉と閂を入念に調べた。
「頑丈に出来てやがるぜ」
蔦は丈夫でちょっとやそっとでは切れそうにない。素人には手におえる代物ではなかった。しかし、このやり方は知っている。スニークは数あるダミーの結び目から本物の結び目を見つけると、ダガーの刃先をこじ入れてほどいた。途端に、がんじがらめだった蔦は緩まり、はらりととれてしまった。
スニークは閂をはずした。
「この先に何があるんです?コソドロさん」
「BISのダンナはわかっちゃねぇなぁ。こんだけ厳重に閉じられてるとなりゃ、中身の相場は決まってるでしょ」
言いながらスニークは扉を開けて中へと入って行った。残りの者も後に続いた。
少し進むと幅は広くなり、ちょっとした広場となっていた。そこで道は終わっていた。
「行き止まりじゃないですか」
「ちょっと待った」
シップの抗議を制し、スニークは目を閉じると精神を集中した。
いつもの癖で下の唇を噛む。
『心の力』が溢れてくる。
「見つけた!」
そう言うとスニークは広場の一箇所に走って行った。
「ここだ、間違いない」
しゃがみこんで、石をのけ土を払う。すると、土の下から木の板があらわになった。慎重に板をはずすと、その下には金貨がギッシリと敷き詰められていた。
「なるほど、これぞシーフの本懐ってわけですか」
「まぁね、オイラには目標があるしね」
「目標?」
「そう。いつか『ルインドライバー』を手に入れるって目標がね。それにはもっと金を貯めなくちゃ」
シーフならば誰もが一度は手にしたいと思う魔法の武器『ルインドライバー』。絶大な威力を持ち鎧をも通すと言われている。その威力と希少さゆえ高値で取引されている。
「その『ルインなんとか』ってなんですか?ドロボーさん専用の武器?」
「まぁね。鎧をも砕く『ルインドライバー』ってね。すげー破壊力の魔法の武器さ」
「あ、あたしそれ持ってるかも!」
「えぇ!?」
仰天するスニークを尻目にフラウはガサゴソと鞄をあさった。
「あったあった!これこれ!ツンツクが拾ってきたの。売ろうと思ってたんだけどドロボーさんにあげるね」
そう言ってフラウが出してきたのは短剣であった。
「10本もあるよ!全部あげるね」
フラウは押し付けるように短剣をスニークに渡した。受け取って見ると短剣は作りのしっかりしたよい品であった。その刃は魔法を帯び冷気を発していた。
スニークは1本を手にとって投げる動作をやってみた。
どうもしっくりこない。
「嬢ちゃん。オイラの腕ではこいつはまだ使いこなせないみたいだわ」
「そうなんだ・・・」
少女はがっかりしたようだった。
「貰っておけコソドロ。その短剣は『ルインドライバー』よりすぐに役に立つときが来るだろう」
RRの言葉にスニークは暫く考えた。
「WIZのアニキの言うとおりだわ。有難く貰っとくよ、嬢ちゃん」
「あの・・・」
少女の顔は困惑していた。
「それって『ルインなんとか』じゃないの?」
 

 

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