【リプレイ風小説 第1話 魔術師達の饗宴】

 

ACT.8 鉱山の悪霊


 3人の『メテオWIZ』が同時に放った『メテオ』が合図であった。メテオの高熱にさらされながらも、魔物どもは爆風に乗って、一斉に8人のウィザードに襲い掛かってきた。それを迎え撃つべく、また、数発の『メテオ』が炸裂した。『メテオ』の閃光に紛れて、すかさず3人の『チリWIZ』が前に出ると魔力を帯びた杖を魔物に振り下ろした。炎の魔力が魔物を焼き、氷の魔力が魔物を凍えさせた。そこへ更に全身包帯でぐるぐる巻きの魔物が数体襲いかかってきた。あっという間に乱戦となった。
「支援君!回復を絶やすな!」
叫びながら、RRは素早く杖を振り『アースヒール』の呪文を唱え続けた。アインもそれにならい出来る限りのスピードで皆を回復していった。やがてウィザード達の猛攻は功を奏し、強力な魔物が1体また1体と倒れ、次第にその数を減らしていった。しかし、好調が小さな油断を生んだ。
アインは背後に忍び寄る魔物の気配に気づかなかった。その禍々しい妖気に気づいたのは魔物の腐った爪がアインの背中につきたてられたときであった。あまりの激痛にアインはがっくりと地面に膝をついた。と同時にアインのベルトポーチの中でピシっと音がして魔除けの『原石』に大きなヒビが入った。
魔物が次の一撃を浴びせようと両の腕を大きく振りかぶったところへ、すかさずドーンが氷の一撃をくらわせた。魔力を帯びた杖の一撃に魔物は一瞬動きを止めると、ギロリと腐った目玉でアインをにらんだ。目玉の端からボトボトと数匹のウジがこぼれた。
「まかせろ。こいつは俺が引き付ける」
「気をつけてください!そいつが『鉱山の悪霊』です」
アインの声を背中で聞いてドーンはフンと鼻をならした。
「相手にとって不足なしってワケだ」
魔物の緩慢だが強烈な一撃を杖で受け流し、返す杖でまた氷の一撃を魔物に食らわせた。
流れるような一連の動作の中でドーンは笑っていた。
「大丈夫ですかな、支援殿」
「なんとか。魔除けの『原石』のおかげで呪われずに済みました」
アインは自ら『アースヒール』の呪文を自身の身体に唱えた。地脈のエネルギーが魔力を触媒に生命エネルギーへと変換されアインの身体に満ち溢れた。腐った爪の傷はわずかな赤い線を肌に残してすっかりとふさがった。
気づくと魔物はあらかた掃討し終わり、残すは『鉱山の悪霊』ただ一体となっていた。
8人のウィザードはこの『秘密ダンジョン』に巣食う最強最悪の魔物をぐるりと取り囲みそれぞれが自身の持つ最高の魔法を操り攻撃した。
8人の攻撃は、致命傷を与えるには至らなかったが、少しずつ『鉱山の悪霊』の腐った肉体を削り、彷徨う魂を無に帰そうとしていた。
長い攻撃であった。
魔物の腐った肉体は表面が『メテオ』で焼け爛れ、あちこちから煙が立ち昇っていた。左の腕は『チリ』の一撃をまともに受け、肩から下がもげて地面に落ち、土へと帰っていた。
アインは支援呪文の効果が切れる前に、皆に『ヘイスト』と『エンチャ』の呪文をかけていった。
「もう少し!もう少しです!」
アインの言葉を誰もが確信していた。
しかし、そう簡単には終わらなかった。
魔物の腐った爪が正面に対峙していたドーンの肩に食い込んだ。次の瞬間、魔物の目が怪しく光った。
パキンという音がしてドーンのベルトポーチの中で魔除けの『原石』が砕け散った。
ドーンの表情は凍りつきガクンと膝を突いた。呪いによって一瞬にしてほとんどの生命力を奪われ、生気を失った顔は土気色に変わっていた。
更に魔物は瀕死の『チリWIZ』に向かって右腕を大きく振りかぶった。
「危ない!よけて!」
アインは悲鳴に近い叫びを上げた。しかし、アインの叫びを耳にした者はいなかった。
魔物の鼻先に炸裂した『メテオ』の爆音が、アインの叫び声をかき消してしまった。

RRは素早い杖さばきで立て続けに3発のメテオを『鉱山の悪霊』に放った。今のRRの能力では、連続で3発の『メテオ』を叩き込むのが限界であった。
最強呪文の『メテオシャワー』を3発ぶち込んでも、魔物を土に帰すには至らなかったが魔物の注意を瀕死の『チリWIZ』からそらすことには成功したようであった。魔物はRRの方へと踵を返すとゆらゆらと歩みを進めた。
RRは、魔物が距離を詰めてくる間、杖を8の字に振り回して『心の力』を回復させた。
魔物が目の前に近づくと、『テレポート』して魔物との距離をとった。魔物はまたゆらゆらとゆっくりとした足取りでRRを追いかけた。そして、段々とドーンから遠ざかって行った。
「支援君。今のうちに回復を」
「やってます!」
アインは焦った口調で応えた。実際、焦っていた。
地脈のエネルギーを魔力で吸い上げて体力を回復する『アースヒール』は、残った体力に呼応して地脈のエネルギーを体力へと変換する。体力がほとんど残っていない瀕死の者を回復するのには向いていないのだ。
それでも、アインは必死に『アースヒール』を瀕死のドーンに唱え続けた。その甲斐あって、徐々にドーンの顔に生気が戻ってきた。
「もう結構、世話をかけた」
言って立ち上がると、ドーンは体力を回復する魔法薬『ヒーリングポーション』を、ぐいとあおった。赤い魔法薬がのどを焼きヒリヒリするが、お構いなしに胃の中へと流しこむ。
「借りを返してやる!」
言うが速いか、ドーンは雄たけびを上げて魔物に向かって駈けていった。
ドーンの渾身の一撃が背後から『鉱山の悪霊』の頭部に打ち下ろされた。グシャリという嫌な音をたてて魔物の頭蓋骨がつぶれた。腐った脳みそとウジが飛び散った。
その潰れた魔物の頭目掛けて、RRの『メテオ』が炸裂した。魔力に守られて『メテオ』の熱をも、ものともしなかった魔物の身体が燃え上がった。
続けて、サイ、シャイン、スパークの放った3発の『メテオ』が魔物の身体を焼き尽くした。
 

 

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