【リプレイ風小説 第1話 魔術師達の饗宴】

 

ACT.5 ホーンド


 『メテオ』の閃光が消えたとき、魔物の群れは数体を残すのみであった。これを3人の『チリ』が駆逐していった。
ドーンの『チリングタッチ』が最後の魔物の頭蓋を砕いたとき、空気が変わった。
相変わらず淀んで濁ってはいたが、今までとは違う邪気を含んでいた。
「気をつけろ。来るぞ」
RRの言葉に息を飲んだ刹那、背後に妖気を感じてサイは振り返った。
そこに蟷螂のような逆三角形の顔をした魔物が、死神が持つ大鎌を振り上げていた。瞬間サイの表情が凍りついた。ホーンドは、この世のモノとは思えない地獄の咆哮を上げてサイ目がけて大鎌を振り下ろした。右の肩口から袈裟懸けにパックリと傷口が開き鮮血が飛び散った。が、しかし、それも一瞬の出来事で次の瞬間に鮮血は止まり、傷口は完全にふさがっていた。アインとRRの2人が唱えた『アースヒール』が地脈からエネルギーを吸い上げ、サイの生命力に還元し、傷を癒したのだ。
「かたじけない」
「危ない!下がって!」
アインが叫んだ。
ホーンドは大鎌を振り上げて、次の一撃を繰り出そうとしていた。そこへ素早く割り込むと、ドーンは渾身の力で杖を撃ちつけた。
『チリングタッチ』の打撃音が響いた。
ホーンドは『チリングタッチ』の魔力を受け、大鎌を振り上げた格好のまま、まるでスローモーションのようなゆっくりとした動きになってしまった。ドーンは続けてホーンドに何度も『チリ』をお見舞いした。杖が当たったところが凍りつき、細かなヒビが無数に入った。
ホーンドの動きがスローモーションになったおかげで、サイは楽々とホーンドから離れて距離をとることができた。
3人の『チリWIZ』はホーンドに次々と『チリ』の一撃を繰り出していった。
スローモーションになったとは言え、殺気のこもった大鎌をよけ損ねてかすり傷を負うこともあったが、RRとアインが『アースヒール』で瞬く間に癒していった。
3人の『メテオWIZ』もまた『心の力』が続く限り『メテオストーム』を放ち、なくなると杖を8の字に回して回復させては、また『メテオ』を放つといった攻撃を繰り返した。
何回目かの『メテオ』の一斉射撃を浴びせたとき、ホーンドの身体が燃え上がった。
炎に包まれたホーンドは地獄の咆哮を残して倒れると、砂地に水をこぼしたように消えてしまった。それとともに邪気は消え、地面に焼け焦げたような黒い影を残すばかりであった。
「行こう。あと、10体残っている」
8人のウィザードは、次の魔物の群れを求めて、更に奥へと進んで行った。

順調であった。8人のウィザードは目の前に現れたモンスターを次々と撃破していった。
魔物を打ちのめす『チリングタッチ』の打撃音と『メテオストーム』の爆音が『秘密ダンジョン』に響き渡った。パーティは『秘密ダンジョン』の奥へ奥へと進んで行った。
快進撃は最後まで続くかに思えた。しかし、そうではなかった。
6体目のホーンドにドーンの最後の一撃が命中した瞬間、ホーンドは断末魔の声を上げ、真っ黒なガスを噴出して消滅した。咄嗟に8人のウィザードは息を止めて口を覆ったが、まさに『アースヒール』の呪文をかける最中だったアインは、まともにガスを吸い込んでしまった。甘ったるい香りに頭がくらくらした。
ガスが晴れ視界が戻ったときアインは冷たい地面の上に倒れこんでいた。RRはいち早くアインに駆け寄った。
「いかがしました?」
「眠っている。命には別状はないようだ」
RRはアインが息をしているのを確認して答えた。
「さっきのガスで昏睡状態になっている。ゆすったぐらいじゃ起きないだろう」
「さすれば『万能薬』を使えば目覚めるのではないですかな?」
「だめだ。『万能薬』や『原石』のような魔法のアイテムは『所有者』が自分の意思で使わなければ効果がない。意識がない状態では使えない。ガスの効き目が切れれば気がつくだろうが、今は何もできない」
RRは握りこぶしを壁の硬い岩盤に打ち付けた。
仲間をおいて、先には行けない。7人のウィザードは『支援WIZ』が目覚めるのを待つより他なかった。
 

 

<<前へ                        <戻る>                     次へ>>