【リプレイ風小説 第1話 魔術師達の饗宴】

 

ACT.4 秘密ダンジョン


 目の前が一瞬赤い光でいっぱいになりそれはすぐに暗転した。暗闇の中自分が立っているのか座っているのか、右も左も、前も後ろも、上も下も全くわからない不思議な感覚。『秘密ダンジョン』の入り口をくぐるときのいつもの感覚だ。
この世界のあちらこちらに点在する『秘密ダンジョン』がなんであるのか、いったいなぜ存在するのか。神が人に試練を与えるために造った空間だというビショップもいれば、地獄へと通じる奈落の一部だというネクロマンサーもいる。魔法都市スマグのウィザードは、次元と次元の狭間だというが、誰にも本当のことはわからない。
真っ暗だった視界にやがて光が戻り感覚が元に戻った頃、アインはほの暗い坑道に立っていた。さっきまでいた廃坑の地下1階よりも空気が淀んでいる。ここは廃坑に隠されたもうひとつの秘密の金鉱『秘密ダンジョン』の中だ。軽いめまいを感じながら周りを見渡すと他の7人のウィザードが立っているのが見えた。全員入り口を通って無事にこちら側に来たようだ。
「おせーよ、支援」
「すみません。秘密酔いする性質なので」
「丁度皆に『万能薬』と『原石』を配り終わったところだ。支援君にはさっき渡したはずだな?」
「あ、はい。持ってます」
アインは先程受け取った『万能薬』と『原石』がベルトのポーチに入っているのを確認しながら応えた。
「OK。自分は『番人』と話してくる。支援君はその間に皆に『支援』を」
「はい」
アインはまだ秘密酔いする頭をひとふりしてから全員に『ヘイスト』の呪文をかけた。
風の魔力の恩恵で体が軽くなり素早い動きが可能となる。ドロワー、ダン、ドーンの3人の『チリ』には続けて『ファイアーエンチャント』の呪文をかけた。火の魔力が3人の体を熱くし、それぞれの杖に炎の魔力が宿った。
「『番人』と話してきた。最後に手順と役割を確認しておこう。
ここから先『秘密ダンジョン』の中には11体のホーンドがいる。ホーンドはそれぞれが魔物の群れを率いている。普段、ホーンドは姿を現さないが、自分が率いる魔物の群れが倒されると姿を見せる。11体のホーンドを全て倒したとき、隠された財宝へと続く道が開かれる」
「もっとも、道が開かれたとしても、すんなりとお宝が手にはいるワケじゃないがな」
「その通り」
RRはドーンを一瞥すると言葉を続けた。
「財宝は『鉱山の悪霊』が守っている。こいつを倒さない限り我々が財宝を手にすることはない」
ゴクリと誰かが唾を飲み込んだ。
「ドロワー、ダン、ドーンの『チリ』を先頭にして、サイ、シャイン、スパークの『メテオ』3人が続く。シンガリは自分と支援君とで勤める。自分と支援君は回復役に徹するからあとの者は攻撃に徹してくれてかまわない」
そう言うとRRは7人のウィザードの顔を見回した。RRと目が合うと7人はそれぞれ小さくうなずいた。
「よし、行こう。宴の始まりだ」

『メテオシャワー』の爆音が『秘密ダンジョン』内に響いた。それが始まりだった。
1匹の洞窟ネズミが黒こげとなったが『メテオ』の爆音に、最初の魔物の群れが集まってきた。これをまた数発の『メテオ』で迎え撃つ。
最終魔法『メテオ』の威力は強大ではあるが、その分『心の力』を大量に消費する。ほんの2〜3発で『心の力』を使い切ってしまう。
『メテオ』の連発で『心の力』を使い切った3人の『メテオWIZ』は、『心の力』を回復するために、己が杖を何度も8の字に振り回した。
魔物の群れは瀕死になった物も含めてまだ3分の2は残っていた。
「ちょっくら、足止めして来る」
そうひと言残して、ドーンは魔物の群れ目がけて駆け出した。
「あ!ひとりで突っ込まないで!」
これを無視して魔物の群れの目と鼻の先まで来るとドーンは杖を高く掲げた。すると、ドーンを中心にして地面が大きく揺れあちこちにひび割れが走った。魔物の群れは揺れに足をとられてまともに移動することが適わず、またある物はひび割れに足を挟まれて動けなくなった。
「ほほう『アースクエイク』ですな。変わった術をお持ちで」
サイがよいものを見たという風にのん気に言った。
「今のうちに畳み掛けて!」
アインが叫んだ。
再び『メテオ』の爆音が鳴り響いた。
 

 

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