【リプレイ風小説 第1話 魔術師達の饗宴】

 

ACT.3 ポータル・クリスタル


「いったいどういうつもりなんです?!」
『支援』という職業柄常に冷静に状況を分析しめったに激することのないアインが、珍しく声を荒らげた。
「見ての通りだ。ウィザードのみでこの廃坑の『秘密ダンジョン』を攻略する」
「確かにここに集まった8人を見ればRR殿の目論見は明白ではありますな。しかし、ビショップ殿なしでいかに攻略するつもりですかな?」
「サイさんの言うとおりですよ!」
「自分と支援君とで回復を行う」
訴えかけるアインにRRは冷静に応えた。
「『支援WIZ』ならば『アースヒール』は使えるだろ?」
「そりゃ・・・。勿論使えますが・・・」
「ビショップ殿の役割は回復だけではないと思いますがな」
「そうですよ、毒や呪いはどうするんですか!『秘密ダンジョン』の中には強力な毒や呪いをかけるモンスターが潜んでいるらしいじゃないですか!」
「こいつを使う」
そう言うとRRはアインに小さな瓶を放った。
「これは・・・」
アインは危うく落としそうになりながら受け取った小瓶を見た。
「『万能薬』だ。毒や麻痺、冷気による硬直などどんな症状も完全に癒してくれる優れものだ。使える分少々値段は張る。呪いにはこいつを使う」
RRは今度は白いカタマリを放ってよこした。カタマリは白い石だった。
「港町シュトラセトラで手に入れた『原石』だ。呪いよけの魔力が込められている。100%とは言えないが呪いを防いでくれる。
この『万能薬』と『原石』をひとりにひとつづつ進呈する」
「でも『死』んだらどうするんですか?『リザレクション』の呪文は、ビショップしか使えないんですよ」
アインが食い下がった。
冒険者の『死』はある一定の生命力を失ったとき、行動不能になることを言う。話すことだけはできるが地面に横たわって全く動くことができない。この状態になったら『回復』では治らない。他の冒険者に『生き返らせ』てもらうかまたは『契約』に従い、街へ『帰還』して『生き返る』かのどちらかだ。
『秘密ダンジョン』の中で『死』んで『帰還』を選んだ場合、パーティの力はメンバーが抜けた分弱体化する。そして新たな『死』を招くはめになる。
「こいつが何かわかるかい?支援君」
不敵に笑うRRの手には、光を放つ鳥の羽のようなものがゆらゆらと揺れていた。その色は燃ゆる炎のように赤かった。
「まさか・・・『フェニックスの羽』!?」
それはまさに『死』んだ者を『生き返らせる』力を秘めた魔法のアイテム『フェニックスの羽』であった。
「こいつぁ面白い。用意周到ってワケだ。『フェニックスの羽』まで用意してるとはな。この話のったぜ!」
「しかし・・・」
「支援殿。貴殿の心配はわかりますがここはRR殿に命を預けることが険呑かと。他に選ぶ道はありますまい。我々も皆、冒険者のはしくれですからな」
アインはもはやサイの言葉に従う他ないことを皆の様子から感じ取った。
「わかりました。行きましょう」
「決まりだな」
RRの言葉に皆がうなずいた。
「『秘密ダンジョン』の入り口を開くぞ」
そう言うとRRは手にした卵大の輝くクリスタル、『秘密ダンジョン』の入り口を開く『ポータル・クリスタル』を坑道の行き止まりの壁に向かって高く掲げた。すると行き止まりだった壁が赤く光りRRの体が光の中へと吸い込まれて行った。
RRの体が吸い込まれた壁には赤い光が残された。
「行くぜ!」
「お先に」
口々に勝手なセリフを残してウィザード達は赤い光の中へと消えていった。一番最後にアインが光の中へと飛び込んだ。
 

 

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