【リプレイ風小説 第1話 魔術師達の饗宴】

 

ACT.1 ウィザード


廃坑。かつては多くの鉱夫で賑わった金鉱も、金脈の枯渇とともに往時の栄華は露と消え、今や迷路と化した坑道のあちらこちらに住み着いた魔物共と、それを狩る冒険者達が行き来するばかりである。
その廃坑の地下1階に男は来ていた。
手にした地図をながめ座標を確かめる。間違いない。この廃坑に隠されたもうひとつの秘密の金鉱。そこへと繋がる入口を開くための鍵『ポータル・クリスタル』を持った者だけが入ることを許される『秘密ダンジョン』の入口。そこに男は立っていた。
男の名はアイン。多彩な魔法を駆使するウィザードの中でも取り分け、仲間の攻撃力を向上させ、動きを素早くさせ、或いは体力を回復させる魔法に特化した『支援WIZ』と呼ばれる職を生業としていた。『秘密ダンジョン』のパーティ(探索行)の一員には必須の職業だ。
「まだ誰も来ていないようですね」
辺りを見回して誰もいないのを確認するとアインは独りつぶやいた。
古都で見つけた、「廃坑『秘密ダンジョン』探索のメンバー募集」の『叫び』は、どうやら募集を始めたばかりであったようだ。
他のメンバーが来るのを待つしかない。
アインは腰を下ろすのに具合のいい場所を探して落ち着くと、まだ見ぬ今回のパーティのメンバーに思いを馳せた。
屈強な戦士。素早さを信条とし素手で闘う武道家。強大なモンスターを使役するビーストティマーのお嬢さんがいるかも知れない。
それもこれもパーティーのメンバーを募集するリーダーの才覚だ。今回のパーティーのリーダーであるRRという人物は、いったい如何なるメンバーを集めることだろうか?
そんな思いにふけって10分も経ったころ、アインはほの暗い坑道をこちらに向かってくる人の足音に気がついた。どうやら新たなメンバーが来たようだ。
「お初にお目にかかる。拙者は『メテオWIZ』のサイと申しまする。お見知り置きを」
そう言って、男は右手を差し出した。
ウィザード最強の最終魔法『メテオシャワー』を主戦力とする『メテオWIZ』。魔法の名をとって単に『メテオ』と呼ばれることも多い。武器で直接相手にダメージを与えることのない『メテオWIZ』ならば、攻撃強化の魔法『ファイヤーエンチャント』をかける必要はないだろう、とアインは計算していた。
「初めまして。『支援』のアインです。よろしくお願いします」
アインはサイの右手を握り締めた。
「おっと、もうひとりお見えのようだ」
そう言うサイの視線に目をやると、さっきまでは誰もいなかった場所に、ひとりの男が立っていた。おそらくこの場所を『記憶』して『跳んで』来たのであろう。身なりから判断するに男もウィザードであった。
「3番目ですか。シャインといいます。『メテオ』です。よろしくお願いします」
「これはこれは『メテオWIZ』が2人とは豪勢ですな。派手に花火を上げるとしますかな」
そう言うとサイはカッカと笑った。

 また暫く時間が経った。
『メテオWIZ』同士のメテオ談義がひととおり終わったころ、またもや何もなかった空間に忽然とひとりの男が出現した。男もやはりウィザードであった。
「『メテオ』のスパークです。みなさんよろしくです」
「いやはや全く豪勢豪勢!」
3人目の『メテオWIZ』の登場をサイは嬉々として迎えた。『メテオ』には派手好きが多いがサイもその類であるのだろうとアインは思った。
1度の探検行のメンバーに『メテオ』が2人というのも珍しいのに、これが3人ともなれば奇跡に近い。偶然とは恐ろしいものだ。
アインは3人の『メテオ』が放つ『メテオシャワー』の様を想像し、その豪華絢爛さを想像した。
先ほど鎮火したメテオ談義がシャインの参加で再燃した。
3人の『メテオ』の議論が白熱してきた頃、ほの暗い坑道の向こうから、今度は2人の足音が近づいて来た。
「お仲間が来たようですな」
サイの言葉を聞きながら4人のウィザードは足音がする方に目をこらした。
坑道に響く足音は次第に大きくなり、やがて2人の男がその姿を現した。
「RRさんのパーティはこちらですか?」
2人のうちのひとりが聞いた。
「いかにも、RR殿のパーティーに間違いござらん」
サイの時代がかった返答に男の口元がわずかに緩んだように見えた。
「初めまして、私はドロワー、こちらはダン。2人とも『チリWIZ』です」
『チリWIZ』。魔法の冷気を帯びた杖の一撃で相手を倒す『チリングタッチ』を主戦力とするウィザードである。単に『チリ』とも呼ばれる。
新しく現れた2人のウィザードと、それを迎えた4人のウィザードは互いの顔を見合わせた。
丁度その時、6人の真ん中にひとりの男が『跳んで』来た。
男は自分が6人のウィザードに囲まれているのに気づくとフフンと鼻を鳴らした。
「おいおい、ウィザードの大安売りか?」
そう皮肉たっぷりに言う男もまたウィザードであった。
「俺はドーン。『チリ』だ」 
 

 

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