「…………ええ、え?」

滲み笑いしか出来なかった。









此処までくるのに何百年かかったか…。
何十年も留年して、仕舞いには私と同級生だった者はすでに死神で席官についていた。
それでも私はめげずに死神になることだけを考えてきた。
そして、今年…やっと死神になれたのだ。
だがしかし、つい最近入隊したばかりで、まだ右も左も分からない状態。
失敗は沢山ある。
上司に何度怒鳴り散らされたり溜息をつかれたか…そりゃあもう数え切れないほど。
でも、だからって、こんな間違いは絶対しないと思うの。

「失礼します!十番隊のです!」

慌てて戻った十番隊。
先輩にも同僚にも挨拶をする暇もなく瞬歩で向かった執務室。
中の返事も聞かずに、私は戸を開け隊長の机に飛びついた。

「おま……っ」

「隊員の調査書類を見せて下さい!!」

一般隊員が挨拶もせずに隊長がいる部屋に入り、あまつさえ机に手をつき迫ってくるなんてこと、 滅多にあることではない。
だから、隊長が驚くのも無理もない。
それでも、うちの隊長は驚きつつも、私を注意しようと何か言おうとした。

だけど、そんなの気にしてられない。
上司へのマナーがなってないとか今はもうどうでもいい。
だって、それどころじゃないもの!

「……なんでそ「あー、これこれ。このファイル。」…松本…。」

と、ソファーに座ってお茶をしていた松本副隊長は、 机の上にある、ものすごく分厚いファイルを指さした。
私は机に向い、ファイルに食らいつく勢いでバラバラとページを捲ってく…。
さっきの出来事が嘘であってほしいと願うばかりだ。

「えー、別に見せても困ることないじゃないですかあ…。」

「困る、に決まってンだろうが…。」

隊長達の会話に耳を傾けず、私は最後の方に目的のページが見つけた。
そして、そのページに書かれていた事実に、 私はバサリとファイルを開いたまま大きな音をたてて落とした。
その様子に、隊長達は私を不思議そうに私の方をみる。
そんなこともお構いなしに私はへなへなと床に座り込む。

あぁ、もうなんてことだ…。
本当にこんな間違いがあるなんて………。
私が今着ているこの死覇装が一回り大きいものだということや 私の帯が他の女子隊員と異なっていること、
隊員の宿舎に言っても私の荷物がなかったこと…今まで矛盾していた点がはっきりした。

「………?」

怪訝そうな顔で睨んでいるであろう隊長。

そんな隊長の言葉も遠くから聞こえる。
私はそのまま茫然とし、自分の失態に沈んでいた。

(やってしまった…。)

声をかけても、反応もせずに座り込んでいる私を不審に思ったのか、 副隊長が私の足元にあるファイルを拾い上げた。

「…別におかしいこと書いてないわよ?」

何を落胆してんの、あんた?…と、不思議そうに私を見下ろしてくるが、
もの凄くおかしい事態になっていることに気づいていただきたい。

「……えーっと、今年から十番隊に所属、ね……。」

私の調査書を読み上げていく副隊長。

「へー…あんた、っていうのねー。」

そう関心しながら、私の方をじろじろと見てくる副隊長。

「……松本。」

隊長に促され、副隊長は次の項目を見ようとして、ふと止まる。

「………ん?」

書類のおかしさに気づいた副隊長は、書類から手を離し私の目をじっと見つめる。

「…………。」

ただ見るだけなら、そんなに気にはしないけど…… 副隊長は何かを確かめるように私を上から下まで見る。

異様なほどに見られる感覚に、慣れてない私は居心地が悪くて、少し身を引く。

すると、副隊長の両手が私の死覇装に手が伸びてきて、 そのまま胸元の襟を掴んで一気に広げ、胸元を露わにさせた。

「………っきゃあああ!!」

突然のことに頭がついていかずに、数秒間…呆然としてたが、 急に外気に触れた肌が粟立つのを感じ、悲鳴をあげた。

女同士なら良いって問題ではないけれど、 ここには今男性である日番谷隊長がいるのにもかかわらず、胸元をはだけさせてしまった。

顔を真っ赤にして、松本副隊長を見ながら何か言おうと口をパクパクさせる。
そんな私の様子もおかまいなしに松本副隊長は後ろで頬を染めている隊長の方を振り返る。

「………胸、ありましたよね…隊長?」

「き、聞くな!」

隊長にそう言われて、怪訝そうな顔で考え込む松本副隊長。
段々、落ち着きを取り戻しながら、日番谷隊長をちらりと見る。
少なくとも、いきなりのことに動揺をしている様子が伺える。

(ああ…隊長になんてものを見せてしまったんだ……。)

そう、ショックを受けていると、松本副隊長はもう一度私を見て、

「もしかしてあんた……ニューハ「違います!!!!」………そ、そうよね…。」

そこまで確認すると、松本副隊長は納得したのか、溜息をついた。

「…さっきから、一体なんなんだ……。」

事態を理解できない隊長が、松本副隊長の横に落ちている書類を拾い読む。
流し目で読んでいた目がピタリと止まる。

そして、彼はこう言い放ってくれたのだ。

「………、男だったのか…?」

そう、女である私の調査報告書の性別欄には、男と表記されてあったのだ。