抱きしめたい

       〜La Prelude d’amour(愛へのプレリュード)〜 後編

                              MYUさま作









     「ッツゥ・・・!」



     「大丈夫か?」



      アンドレが身体を起こそうと、傷の痛みにうめいた時、彼を支えようとして、


      お互いを抱き合うような体勢になった。


      黒ぶどうの髪、黒曜石の濡れてきらめくただひとつの瞳・・・。


      失わずに済んだ。誰よりも何よりも大切なものを・・・。


      わたしはアンドレの唇にそっと口付けた。



     「愛している、アンドレ。この世で誰よりも。」



      そう言って、わたしは彼の胸に顔をうずめてしまった。


      アンドレが震えている・・・。


      夢ではないのだと、伝えるように彼の背に腕をまわして抱きしめた。



     「・・・もう一度・・・、もう一度、言ってくれ・・・。オスカル。」



     「何度でも!愛している、アンドレ。」



      言った瞬間、きつく抱きしめられていた。








      ーあたたかいー


      広くたくましい胸ーここがわたしの居場所なのだ。やっとたどり着けた。


      このぬくもりを失うなんて考えられない・・・。


      顔を上げるとアンドレの唇が降りてくる・・・。








      わたしの知っている唇は


      熱っぽくて弾力があって


      すうようにしっとりとわたしの唇をおしつつみしのびこみ・・・。


      わたしの知っているくちづけは・・・。


      息も出来ないような激しいくちづけがほどこされる。


      今までの想いのすべてを伝えるかのような激しいくちづけ・・・。


      何度もおまえからのくちづけを受けて、わたしは愛されるという幸せの渦の中にいた。








          








      ふいに唇にふれたやわらかい感触、そして・・・



     「愛している、アンドレ。この世で誰よりも。」



      聞き違いではないのか?・・・何と言った?おまえが俺を愛していると?


      おまえは俺の胸に顔をうずめた。


      俺の存在を確かめるかのように背に腕をまわして抱きしめてきた。



     「・・・もう一度・・・、もう一度、言ってくれ・・・。オスカル。」



     「何度でも!愛している、アンドレ。」



      俺はおまえを力いっぱい抱きしめた。おまえの愛おしさを示すかのように。








      〜抱きしめたい〜


      ずっと願っていた。男としておまえを抱きしめたい。


      俺の愛でおまえを包み、ともに歩んでいきたいと・・・。


      かなわぬ夢と思っていた。


      永遠に届かぬ想いだと。


      でも願わずにはいられなかった。おまえのすべてを欲していた。








      おまえが俺を愛してくれている。


      確かめるように俺はおまえの唇を求めた。


      あの時と変わらず柔らかく優しい唇・・・。


      届かぬ想いを気を失っているおまえに伝えようとした時と同じ・・・。


      貪るように何度もおまえにくちづけをした。おまえの唇から甘い吐息がこぼれる。



     「愛している、オスカル。俺のすべてを賭けて。」



      オスカルを抱きしめたまま、誓いをたてるように言った。



     「あ・・・。わたしも・・・。わたしのすべてを賭けておまえを愛している。」



      おまえからの誓いの言葉を得た俺は、さらにきつくおまえを抱きしめた。


      おまえは俺のものだ。


      もう離しはしない。ああ・・・この命の尽きるまで。








          








     「愛している、オスカル。俺のすべてを賭けて。」


      おまえの愛の誓いを聞いて、また涙が溢れだした。


      聞きたかった言葉を聞くことができ、わたしは悦びにふるえていた。


      アンドレがきつく抱きしめてくれたのに応えるようにわたしも彼をきつく抱き


      しめ返していた。


      おまえはわたしのものだ。


      もう離れられない。離れては生きていけない。たとえ世界を敵にまわしても・・・!!








      わたしを抱きしめながらアンドレは言葉を続けた



     「夢を見たんだ。一面花畑が広がっているんだ。俺はひとりでそこを歩いていた。

      歩いても歩いても先に進んでいないような気がした。辺りを見回すと川を見つけた。

      引き寄せられるように川の方に行ったよ。

      きれいな川で、水面にすいこまれそうだった。

      向こう岸には母さんがいたんだ。俺は母さんのところへ行こうとした。

      でも母さんは来てはいけないと言うんだ。俺にはまだやり残していることがある。

      俺を必要としてくれる人がいると。俺の帰る場所へ戻れ・・・と。」



      わたしはアンドレの話を聞きながら身が凍る思いだった。


      このまま彼が母上のところへ行っていたら・・・? 


      さらに彼を抱きしめる腕に力を入れた。



     「その時、蒼い光が見えたんだ。母さんは黙ってうなずいた。

      蒼い光のまわりには金色の光が円を描くように煌めいていた。

      その光が俺を導いてくれているようだった。そこから俺を呼ぶ声が聞こえたんだ。

      あの光は、オスカル、おまえだったんだな。

      おまえが俺を死の淵から救い出してくれたんだ。

      母さんの言っていたことはこれだったんだ。

      ・・・俺のやり残していることはおまえを守りぬくこと、おまえはまだ俺を必

      要としてくれていること、おまえが俺の帰る場所なんだ、俺の居場所はおまえ

      なんだ・・・とね。」



      アンドレがわたしを見つめる。昔から変わらず包み込むような優しさをたたえた瞳で・・・。



     「そうだ、アンドレ。わたしがおまえの帰る場所だ。そしておまえはわたしの帰る場所だ。

      わたしの幸せは・・・おまえの幸せだ。いや、おまえのすべてがわたしの幸せだ。

      おまえも・・・。わたしのすべてがおまえの幸せだろう・・・?」








      ー俺の愛を求めているー


      蒼い瞳は俺の愛を確かめている。愛おしさで胸が締め付けられる。



     「もちろんだ、オスカル。おまえのすべてが俺の幸せだ。

      俺のすべては、おまえのものだよ。」



      そう言って唇をふさいだ。








          








      抱きしめたい


      終わりのない愛を示すように互いをきつく抱きしめたい。


      おまえがわたしの居場所・・・。おまえが俺の居場所だ。


      おまえがいたから孤独ではなかった。どんな困難も乗り越えられた。


      ふたり一緒にこれから歩いていくために・・・。抱きしめたい。








     「俺達の愛は始まったばかりだ。」



     「いや、もうすでに始まっていたのだよ。わたし達が出逢った時から・・・。」



      そう、始まっていた。ふたりの愛へのプレリュード・・・。


      長い長いプレリュード・・・。気付くのが遅かったけれど・・・。



     「そうだな。出逢った頃から始まっていたのかもな。」



      そう言ったアンドレに、今度は自分からくちづけた。








      〜抱きしめたい〜


      ことばはなくとも・・・。


      出逢ったころから愛していた。気付かぬうちに静かに育んできた。


      ふたりの“愛”


      ふたりの“絆”








      溢れる想い。この想いは消えはしない。


      苦しんだ分だけ、悲しんだ分だけ、その想いは強く深くなる。


      まわり道をした分だけ確かなものとなる。


      わたしを抱きしめるのはおまえ。おまえを抱きしめるのはわたし。


      おまえはわたしの命。


      おまえとわたしの絆は誰が切ろうと切れはしない。


      出逢いから長い“愛へのプレリュード”をふたりで奏でてきたのだから・・・。










      Fin












     


管理人より。

 『抱きしめたい〜愛へのプレリュード〜』の後編でございます♪
 MYUさまのとても素敵なお話を皆さまもお楽しみ頂けたことと思います。

 MYUさまから、『愛のかたち』『愛へのプレリュード』の
 後書きを頂きましたのでこちらも合わせてご覧下さいませ。

 MYUさま、ありがとうございました♪
          








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