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平和に。
犬が根っからの猟犬でも同じ家に飼われている動物に手を出してはいけないと教えることはきわめて容易ではありません。
外の道では言うに及ばず庭でも幾ら懲らしめても猫を追いかけることをやめない手におえない猫追跡者でも家のなかでは猫やその他の動物に対して同じことをしないように訓練するのはごくやさしい。
そんな訳で新しく手に入れたどんな動物でも書斎の四つの壁のなかで犬に合わせるというのがとうちゃんの習慣となっている。
家のなかの犬がなぜそう殺気立って居ないのかはとうちゃんには分からない。
しかし一つの事だけは確かであります。
すなわち家の中に有って弱まるのは狩りたてる欲望だけであり戦う欲望はそうではないということであります。
とうちゃんが飼っている犬は全部とうちゃんの部屋に入ってこようとする見知らぬどんな犬に対しても極めて攻撃的であります。
とうちゃんには他の犬について同じことを観察する機会はなかった。
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原則としてとうちゃんは犬を飼っている人の家にはとうちゃんの犬を決して入れなかったからであります。
それは他人に対する簡単な配慮であります。
それは単に犬の戦いが大抵の人の神経に障るからだけではなくとうちゃんは個人的にはこの事を気にしない。
とうちゃんの犬はいつでも勝つからであります。
見知らぬ同類が訪ねて来ると大抵の雄犬はどこの家の主婦にとっても歓迎できない反応を示すからであります。
犬が足を上げる仕草は非常に決定的な意味を持って居てそれは逆にいえば小鳥の歌とまさに同じ意味をもっているのだ。
縄張りの印づけでありすべての侵入者に対しておじちゃんらの感覚ではっきりと分からせておじちゃんらが他人の所有している領域に侵入したことを知らせて立ち入ることを禁止する為の物であります。
殆ど全ての哺乳類はその縄張りをおじちゃんらの最も鋭い感覚能力である匂いによって印す。
よく訓練された犬は自分の家ではこの縄張りの印づけを行なわないいずれにしてもそこの雰囲気にはおじちゃん自身の匂いが人間の持ち主の匂いが十分にゆきわたっているからであります。
見知らぬ犬が悪いことによく知っている大嫌いな敵がほんの瞬間であっても入口をまたぐとこの抑制はただちにとり払われる。
この場合多少とも元気のよい犬ならどれも自分の濃縮した尿を振り掛けて敵の匂いを消してしまうことをどうしてもしなければならぬ義務だと考えます。
飼い主にとってとくにそれが婦人である場合にはなおいっそうやりきれぬことに清潔な飼い犬が家中を足をあげて恥ずかし気もなく家具から家具へと歩きまわるのであります。
犬を飼っている人の家に自分の犬を連れて入る前にこのことを考えてもらいたい。
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自分の家の中での犬のこの平和主義はこうしていずれは獲物になるものか自分とは同じ種に属さない物に対してだけ発揮される。
ここに動物王国に於ける積年のそして非常に広範囲に渡る行動反応或いはもっと適切に表現すれば抑制を見ることかできる。
タカやその他の猛禽類がその巣の近くで獲物を漁らないことはよく知られている。
十分に成長した雛のいる鳩の巣はタカの巣のすぐ近くで発見されるしカモがキツネの住んでいる穴に巣を構えて雛を孵すと言う 信頼するに足る情報もあります。
オオカミが自分の穴のすぐ近くでシカの子どもが成長していくのを放置しておくという報告もあります。
わが家の飼い犬たちが家の中で様々な種類の動物に対して非常に友好的なのはまさにこの長年に渡る平和の決まりの為だと言うのも有り得る事だととうちゃんは考えている。
家の中で獲物を殺す事に対する抑制は絶対的なものではありません。
獲物を追いかけることに強い欲求を持って居る血気盛んな若犬に猫アナグマウサギネズミその他の動物たちがこれからは自分と同じ飼い主に仕えるのだということそしておじちゃんらは食べてはいけないだけでなく触れてもならぬ神聖な換言すれば完全にタブーであるということを教えるには思いきった手段をとる必要があります。
何年も前に最初の猫を連れて家に帰りもっとも熱心な猫追跡者の一匹である犬にどうやってこの小さな生き物に手出しをしてはいけないと教えたかをとうちゃんは昨日のことのようにはっきりと思いだす。

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