再び私たちは洞窟に足を踏み入れた。
先ほどは分からなかったのだが、洞窟の中は日光が差し込まない分涼しい。
否、少し寒い。
汗をかいていた分、よけい寒く感じる。
ぶるりと背筋を震わせる、よく見たら鳥肌が立っているじゃないか。
私は両手で体を軽くさすりながら、洞窟を見渡した。


 洞窟内は鉱物の発光のおかげでほのかには照らされているが、お世辞にも明るい!とは言えない明るさ。
周りの景色はぼんやり見えるが、やっぱり薄暗い。


 そっと落ちていた鉱石に触れるとほんのり暖かかった。
周りにある鉱石ほどではないが、ぼんやりと光を放っていて、綺麗。




「緊張してる?」




私が頷くと八雲が恥ずかしそうに




「俺も」




と、笑った。




「薄暗いよな、こんなに薄暗いとは思わなかった」
「ちょっと、怖い」
「俺も」




 ゲームの中なのに情けないなあ、と呟く言葉にここが新世界だったことを思い出す。
凄い、鳥肌まで再現されるのか。
すっかり忘れてたよ、でも、ゲームなら安心かも。
痛くないし、死ぬ事は無いし。
洞窟の薄暗さに怖じ気づいていた心に、勇気がちょっぴり戻ってきた。




「じゃあこれから探検するからなー、その前に自分の携帯見てみろー」




 携帯の画面の明るさに目がくらむ。
目をつぶり、光に慣れさせるようにゆっくり目を開くと、そこには今までのマップ画面ではない、見た事の無い表示になっていた。
大きく二つにわけられている画面。


 上半分の文字ばかりかいてある方の一番上に 美桜 の文字。
これはきっと持ち主である私のプレイヤー名だろう。
その隣には緑色の棒がある、コレは一体なんだろう。





「それは体力バーだな」





レイさんが私の画面を覗き込んで言う。
八雲は私の画面を同じように覗き込んだり、自分の画面と見比べたりしている。





「体力が減ると、緑が赤に変わるんだよ」
「すべて赤に変わったら?」
「ゲームオーバーだな」
「ゲームオーバーになったらどうなるんですか?」
「もしパーティー……仲間がいたら仲間が倒れるまでは放置、全滅したら強制的にダンジョンの外へ放りだされる」




 レイさんはそう言うと目線を下の方へ向ける。
体力バーの下には 異常なし の文字、そしてステータスが表示されていた。




「異常なしってのは文字通り異常なしでな、毒とか麻痺とか、そういう異常が表示される欄。
 んで、その隣がステータス表示な」




 攻:7、防:3、魔:2。
ということは攻撃力が強いということなのだろう、しかし、攻撃にステータスが伸び過ぎて他がおざなりになっている感が否めない。
なによりも……





「魔力低過ぎでしょう、これ……」
「俺なんて魔力0だけどな」
「ええ、それは悲惨……ええ?!」





 八雲の携帯を覗き込むと、確かに、魔力の欄は0になっていた。
攻撃力は5、そして防御が飛び抜けて高い。
しかし0とはどういう意味なのだろうか。
素質無し?だめだめ?





「0ってのはそのままの意味だ、苦手中の苦手だな、例えば……」





 レイさんが八雲の携帯を指差す。
プレイヤー名の丁度となり、体力バーに行く手前に小さく水と書いてあった。





「兄ちゃんは水属性だからな、地属性の魔法攻撃にはてんで弱いってわけだ」





 そうだ、属性!
私は自分の携帯を見つめる、プレイヤー名の隣、隣、となり……。





「どうした?嬢ちゃん」
「……なんでもないです」





 火属性でした……。




 八雲のステータスは攻撃は5、防御は7、魔力は……0、という私よりもアンバランスなステータス割り振りになっていた。
魔法は0だけれども、装備自体では魔法は使えるらしい、がやはり普通の人よりも魔法の使える度合いは低くなるそうだ。





「せめて1あったら違うんだけどな、まあこういうときもあるさ」





 八雲は特に傷ついてる様子も無く、逆に清々しい表情をしていた。
意外、ショック受けてるかと思ったのに。
目をまん丸くして彼を見上げていると、八雲はその視線に気づいたのか苦笑を返した。



 ステータス表示画面はそこで終わっていて、もう下半分はいつも通りのマップになっていた。
どうやらこれで迷う事はなさそうだ。
よかったよかった。





「よっしじゃあ奥へ進むか」





 どこから持ってきたのか、いつのまにかレイさんは手元にランタンを持っていて、私たちの前を歩き出した。
ランタンがともされたおかげで、大分視界が広くなった私たちは、周りを警戒しながらも、彼の後へ着いて行った。